第1章 吉兆を告げる白梅
「はい!父上、杏寿郎は父上がお留守の間、千寿郎を見ております。共にお八つを食べた後は千寿郎を昼寝させ、私は勉強を致します! 」
いつもながら、キレの良い声だ。小さな身体から発しているにも関わらず凛々しさを感じさせる。
「よし」
短く言って父は、玄関の上り框に腰掛けて草履を履いている。精悍な父の背中が杏寿郎の目線の高さになる。しゃがむ時に羽織がふわりと舞った。
煉獄家に代々伝わる、炎を模した羽織は美しい。純白の部分は目に染みるような聖烈な白で、煉獄の炎で焼かれ清められた魂のようだ。
戦国の世から続いている名門の血を受け継ぐ父は、全身から揺るぎない強さと気高さを纏う。その姿は幼い杏寿郎とって英雄の如く煌めいていた。