第8章 ※ 誰を愛していたとしても…。
近づくひなたが見たのは、不思議な雰囲気のする木の箱を奪おうとしている不死川さんと、箱を取られまいと必死の隠の女性だ。
「不死川様、こちらは、さる隊士様がお連れになった方でございます。私はお館様がお見えになるまで監視するようにと仰せつかっているのでございます!…どうか」
「…ごちゃごちゃ言ってんじゃねェ!鬼なら退治するのが鬼殺隊だろうがァ」
「不死川様…困ります…! 」
女性は、不死川さんの迫力に焦っている。
ひなたはゴクリ、と唾を飲み込んだ。
困っている隠の女性を手助けするべきか、でも、不死川さんの顔が怖すぎて出ていくのが躊躇われる。
ひなたが悩んでいる間に、隠から箱を奪った不死川さんは、けっこう大きなその箱を片手で持ち上げ歩き出す。
「…ったく、こんな事に時間取らせるんじゃねェ」
「お待ちください! 」
静止を無視して不死川さんは、箱を軽く持ち遠ざかっていく。
「どうしよう、不死川さん向こうに行っちゃう! 」
煉獄さんを追いかけて楽しむ筈が、なんだか揉め事に遭遇してしまった。
ずらり並んでいる柱の中に煉獄さんがいた。煉獄さんは、他の柱たちと同じように真剣な眼差しを一人の隊士に向けていた。
「誰だろう?男の子かな」
ひなたのいる所からは、男の子らしい隊士が拘束されているのが見えた。
「鬼を連れてたバカ隊員はそいつかいィ! 」
不死川さんのよく通る声が響いて、その場が緊張に包まれた。慌てている隠、そして男の子の顔が見えてひなたは思わず声が出ていた。
「炭治郎君!!なんで⁈ 」
産屋敷学校の生徒の炭治郎だ。おじいちゃんの生徒さんの炭治郎君が何故、ここにいるの⁈
「鬼が何だって?坊主ゥ。鬼殺隊として人を守るためにたたかえるゥ…? 」
不死川さんは腰に手を伸ばした。鞘から引き抜かれた緑色の刀身をギラリと光らせ振り上げ、箱を突き刺そうとした。
両手を縛られている炭治郎が驚きで身を起こすのとひなたが飛び出すのが同時だった。
「っ、駄目えぇぇぇぇえーつっ!!!!不死川さんんっ!! 」
その場にどよめきが起こる。ひなたは不死川さんの前に走り寄る。
思わず避けた不死川が箱を高く振り上げ、ひなたがその胸に突っ込む形で止まった。