第3章 必要とされないモデル
隣に、おじいちゃんの優しい気配を感じる。ひなたは今の自分の気持ちを吐露した。
「私にとってモデルのお仕事は天職だって、そう思ってるの。でもね、今の私にはモデルはできないの。社長は広い世界を見てこいって。おじいちゃん、私には何ができるのかな。今日も面接駄目だったんだ」
今や自信も無い。私って何か出来る事あったっけ?
「…焦ることは何もない」
おじいちゃんはポツリ、と言った。
「でも、働かないと。取り柄もないからどうしたらいいかな…」
悲しい気持ちがまた襲ってくる。必要とされないモデル…。
「ひなたや」
それまで、静かにひなたの言葉を聞いていた輝利哉が、ゆっくりと話し出す。
「ひなた、おじいちゃんの家にある白梅は知っているね」
「うん。きれいな梅の花が咲く木ね。それがどうしたの? 」
輝利哉は優しく頷いた。
「あの木を植えたのは私の父なんだ。私の父上と母上、ひなたのひいおじいちゃんと、ひいおばあちゃんだね」
「産屋敷耀哉さんと、あまねさんね。知ってる!そんな昔からあるの⁈ 」
輝利哉の屋敷には幾つもの庭木があり、どれも年輪を感じるけれど、あの白梅がそんなに古いものだったとは…。
おじいちゃんは穏やかな口調で語る。
「私の両親はお見合い結婚をしたのだけど、二人が初めて逢った日、母が父に贈った白梅の枝があまりに綺麗で、父はその枝を、二つの屋敷に分けて植えたんだよ。一つの白梅は、ある時、私の両親と姉妹と一緒になくなってしまった…」
「おじい、ちゃん…? 」
ひなたにはおじいちゃんが泣いているように見えた。おじいちゃんのお父さんとお母さん、そして二人の姉妹は一緒に亡くなったと聞いた事がある。
祖父の心には、辛い体験の影が残っているのだと思う。