第3章 必要とされないモデル
「私ね、モデルとして、これから仕事が減っていくだろうって。この仕事で一番信頼してた人に言われたの。そして、契約も今月いっぱいで終わるの」
言った…。
「おじいちゃん、お父さんとお母さんには黙っててくれる?二人にはまだ言えないから…」
ひなたの声はだんだんとか細くなってゆく。
「分かったよ。ひなたがそう言うのなら、おじいちゃんも二人には黙っていよう」
おじいちゃんはそれだけ言うと、盆栽をひなたに見せた。
「ひなた、君ならこの木をどう剪定する? 」
突然振られて、ひなたはきょとん、とする。盆栽は眺めるだけで、どこを整えて良いかなんて分からないのだ。
「分からないよ。変に切ったら取り返しがつかなそうだもん」
「じゃあどうしたら良いだろうね」
「この木に聞いて、どこを切ったら良いか聞いてみるとか」
ひなたが盆栽の枝を眺めて言うと、おじいちゃんは嬉しそうな顔をした。
「そうだよ。この木には意志がある。こうなりたいという、その想いを知らないといけないね。おじいちゃんやひなたが適当に切ってはいけないんだ」
輝利哉は枝の一部をそっと鋏で切り取った。
「ひなたにも意志がある。それは尊重されるべきもので、君が君らしく生きていくために失ってはいけないものなんだよ」
おじいちゃんは鋏を置くと、ひなたの隣に腰掛けた。
「ひなたは何がしたい?モデルのお仕事かな? 」
おじいちゃんの穏やかな声は、ひなたの気持ちをゆっくりと溶かして、素直にしていく。