第3章 必要とされないモデル
ひなたが祖父、輝利哉の顔を心配そうに窺うと、そんなひなたに気がついた輝利哉は、いつもの優しい祖父の顔に戻った。
「そして、もう一本の白梅の木は、おじいちゃんがいた方の屋敷に植えてあったんだよ」
おじいちゃんはひなたに笑いかけた。輝利哉の微笑みは、見る人の胸に沁みていくような独特な微笑みだ。
「ひなたも知っているあの木だね。おじいちゃんはあの木から枝を切り取り、盆栽を育てたんだ」
「おじいちゃんの家にあるの? 」
「そうだよ。ひなたはまだ見たことがなかったね」
「うん。歴史が詰まってる盆栽なんだね、見てみたいな」
おじいちゃんはひなたを優しい眼差しで見つめる。
「おじいちゃんにとって大切な白梅を、大切な孫娘のひなたに預けようね。この意味が分かる日が、ひなたにもきっと来る。今のひなたには分からないなら、おじいちゃんの家においで。家の白梅を一緒に見ながら、話しておこう」
「うん…。近いうちに行くね。お仕事を決めてから、おじいちゃんに報告できるように頑張ってみる」
輝利哉はひなたの頭を撫でて、優しく微笑んだ。
「それでもいいよ。いつでも待っているからね」
祖父と話をしていると、ひなたの心はいつも穏やかになっていく。
輝利哉が大好きだった。ずっと、おじいちゃんと一緒にいたい。
早く新しい職を決めて、おじいちゃんに会いに行こう。