第7章 ※ 鬱金香のピンクは愛の芽生え
「本当に練習したのか? 」
厳しい声で言われ、ひなたは飛ばされた竹刀を取りに行く。
「さっと拾え!構え!! 」
涙を滲ませながら、竹刀を拾った。ひなたの華奢な手が、震えながら竹刀を掴むのを、杏寿郎は見ている。
「返事がないぞ」
黙って杏寿郎の前に戻り、構える。でも、顔は真っ赤で、手が小刻みに震え、涙を堪えるだけで精一杯だった。
涙で滲みかけた瞳では、師範の姿を正確に狙う事などできなかったが、力をふり絞り竹刀を振り上げた。
「…やあああっ…!! 」
直後、竹刀を掴まれて、その竹刀ごと吹っ飛ばされてしまった。
庭の土の上に、叩きつけられたひなたは、身体の痛みでうめき声を上げた。
…痛い…。立ち上がるには気力がいるのに、気持ちがついていかない…。
「立たないのか」
師範の容赦のない声が、倒れたひなたの上に叩きつけられたが、ひなたは横たわったまま、すぐに動こうとしなかった。
杏寿郎の鍛錬は、普通はここからが本番である。杏寿郎の指導を受けた者なら、誰もが知っている。
優しい時と、極限まで追い込む時と、使い分ける。
「ひなた」
ひなたの反応がいつもと違うので、杏寿郎はひなたの側まで来て、腕を取り上げた。
普段のひなたなら、きつくても笑いながら杏寿郎に引っ張ってもらって、また構えるのに。
「あー、汚れちゃった」
何度も起きあがり、不満を言いながら頑張っていた。
今日のひなたは、動こうとしなかった。
打ちどころは悪くなかったので、そこは心配ないが、起きない継子の元に歩み寄った。
「まだ、休憩には早すぎるぞ。起き…! 」
語気をさっきより柔らかくしてひなたの顔を覗き込んだ杏寿郎は、次の言葉を飲み込んでしまった。
ひなたの目から、とめどない涙が流れていて、周囲の土の色が変わるほど濡れていた。
「…………」
杏寿郎は思わず言葉を失った。
「ひなた……」
「なぜ…泣いてる…」