第7章 ※ 鬱金香のピンクは愛の芽生え
女性は杏寿郎が車を降りたのを見るや否や、着物であるにもかかわらず走って来た。
「杏寿郎様!! 」
煉獄さんの身体にぶつかるようにして止まる。杏寿郎が受け止めていた。
「杏寿郎様、お帰りなさい! 」
背の高い杏寿郎を見上げ、訴えるように叫ぶ声はひなた達にも聞こえた。
「美也子は、美也子は杏寿郎様がお出掛けになったと聞いて、ずっと帰りをお待ちしておりました。…任務だったのですか? 」
「そんなところだ。美耶ちゃん、そんなに急いで来なくとも、俺は後から挨拶に伺う気でいたんだが」
慌てた様子の女性を落ち着かせるように、杏寿郎の声は優しさを含んでいた。
「だって…何日も何日も、杏寿郎様に会えなかったんですもの…,美也子がどんなに杏寿郎様にお会いしたかったか…」
拗ねたように言った顔が見えた。現代のひなたから見たら、古風な感じもして、着物が似合う和風美人という感じだった。
ひなたは胸がざわめくのを感じた。
窓の外を眺めているひなたに、千寿郎が降りるよう促す。
「ひなたさん、降りましょう。兄上は後から来るでしょうから」
「う、うん」
運転手さんにお礼を言って、荷物を持ち車から出た。
杏寿郎がいる場所は少し離れている。会話が聞こえる距離だった事もあり、千寿郎とひなたはその場に立って杏寿郎達を見ていた。
兄から先に行くように言われだけど、千寿郎も大河内さんと兄の関係が気になっていたから、つい立ち止まる。
二人が親しげに話をしている。
ふと、杏寿郎がこちらの方を見た。そして、足早に戻ってきた。
「ひなた、先に家に入っていてくれ。俺もすぐに行くから」
「うん」
杏寿郎はチューリップの鉢を一つ手にすると、また女性の元へ行った。
「さあ、お土産だ」
女性に手渡して言う声が聞こえてきた。
花を贈られて顔が綻ぶのは、女性なら…。誰だって…。
ひなたの胸が急に苦しさを増していく。
杏寿郎から鬱金香を手渡された女性は本当に嬉しそうに微笑んだ。
「とても綺麗な鬱金香!珍しいわ! 」
「君は好きだろうと思った」
「…ええ…!嬉しい…」
頬を赤らめている。
ひなたは、胸が張り裂けそうになっている自分に気がついた。