第7章 ※ 鬱金香のピンクは愛の芽生え
ひなたの発した言葉の意外さに、その場にいた人達が感心した声をあげた。
「何のお仕事?感心な事だね」
何も知らないから、無邪気に尋ねてくる里の人達。ひなたは、体を張って治安を守っている師範の苦労の事を、この人達に言いたいと思った。
「鬼をやっつける仕事です」
「警察かい? 」
ご婦人の中の一人が言って、皆が笑いだす。
ひなたみたいな女の子の警官は見たことがない。冗談を堂々という子だよと、その場が笑いで包まれていた。
「本当です。今も、皆さんを守ってました」
…私じゃないですけど…。
皆が煉獄さんの頑張りを知らないでいるのが、なんだか悔しいと思った。
「ひなた」
柔らかな杏寿郎の声が、それ以上言う必要はないと柔らかく止めた。
ひなたがハッとして杏寿郎を見ると、目があった。
…私、どうしちゃったのかな…。みんなが、煉獄さんに感謝しないのが許せない気持ちになってた…。
「…ごめんなさい」
謝ると、師範は微かな微笑みを浮かべた。
その笑顔を見ただけで、ひなたは胸がきゅっとする。
やがて、村の人達が参拝しているお寺に辿り着き、本殿にお参りをするのを、師範と共に見守る。
村の人は大人も子供も、お年寄りも、それぞれお饅頭をお供えしてはお祈りをして、また静かに帰って行く。
村人は少ないから、程なくしてほとんどの人がいなくなって、さっきのご婦人と青年の親子が、参拝を終え杏寿郎達の元へ来た。
「さぁ、あんた達もお参りしなさい。健康を願うもいいし、さっき皆で話してたんだけどね、あんた達二人は駆け落ちしてきたのかもねって。わざわざ、こんな所に若い人が来る事は珍しいもの。しっかりお参りして、幸せになるんだよ」
完全な勘違いだったけど、駆け落ちと言われたひなたの心の中で、大きく何かが動いた。
…駆け落ちしても良いかも…。煉獄さんとなら。
という気持ちが湧く。そうだ、煉獄さんと逃げれば、煉獄さんは生きられる。
杏寿郎を見上げたひなたの視線には気がつかない様子で、煉獄さんは明るく言い放つ。
「では、そうさせていただくとするか!皆さんもお気をつけてお帰りになってください! 」
誰もいなくなった境内で、煉獄さんと二人、手を清め本殿に揃って立つ。