第3章 必要とされないモデル
「では、面接を始めます。こんにちは」
「こんにちは。宜しくお願いします」
建設会社の会議室の机に向かい合わせになり、面接をしてくれる男性と挨拶を交わした。
ひなたを見た面接官が驚いた顔をしたのが、ひなたには分かった。
それもそのはずで、会社を訪問した時に、この仕事に応募した事を後悔した。
ひなたは大手の花澤建設のイメージガールを何年もしていたから、建設業界の人なら何度もひなたの姿を目にした事があるはずなのだ。
ひなたのビジュアルはカレンダーとパンフレットになっていて、花澤建設と関係のある各社に配られ、事務所に飾られている筈だった。
「この会社に応募したきっかけを教えて下さい」
と、聞かれても、求人の最新の方に出ていたからです。とは言えなかった。
「やった事のないお仕事をしてみたいと思いました」
と言ってみると、男性はおそるおそる、という口調になった。
「産屋敷ひなたさん、ですよね。あのカレンダーの」
「はい」
と答えると、面接官の男性は椅子の背もたれにもたれて息をついた。
「やっぱり…。見た事あると思ったんだ。モデルさんが、どうして建設会社の雑務に応募したの? 言いにくいかな」
ひなたは俯いた。モデルをクビになってしまった事が、この男性にも雰囲気で伝わっているのかもしれない。
「君みたいな、綺麗な人には向いてないと思うよ。募集は助手を出来る人だったから、現場も僕らと一緒に見に行ったりしないといけないし…。僕らも、出来たら
建築学科を卒業した人が本当なら望ましい。せっかく来てもらって、こんな事しか言えないのが申し訳ない」
申し訳無さそうに男性は言った。
「そうですよね。すみませんでした。お時間をありがとうございました」
男性は会社の玄関先までひなたを送ってくれた。
「僕、産屋敷さんのファンだったんだ。カレンダーやポスターを見ると元気になれた。産屋敷さん、頑張ってください」
「ありがとうございます…」
面接は駄目だったけれど、励まされ、切ない思いで家に帰った。