第7章 ※ 鬱金香のピンクは愛の芽生え
杏寿郎は、木々に囲まれた脇道へと近づいた。ひなたも、そっと後に続く。
音をさせないように気をつけて、師範の背中の影に隠れる。
「ひなた、俺から離れないように」
杏寿郎は、背後に大人しくしているひなたを確認すると、暗闇に向かって声をかけた。
「ここで何をしている」
ひなたには、師範が誰もいない暗がりで独り言を言っているかのように見えた。
「隠れたつもりか?俺にはお前が見えているぞ」
カサカサッ!
それまで、静かな場所だった草むらが大きく揺れて、笑い声がした。子供の声にも聞こえた。
「あっち行け!お前には用がねぇ」
声だけがする。不気味だ。少年っぽい…ひなたはゾッとした。
「この先には人の住む里がある。灯りが見えるだろう。お前のいる場所じゃない」
師範の凛とした声に怒ったか、それは威嚇するように、草むらを大きく揺らした。
「出て来ぬなら、こちらから行くぞ」
「エッ⁉︎ 」
一瞬の事過ぎて、ひなたには何が起きたのか分からなかった。
ただ、目の前にいた煉獄さんが急に消えて、一直線に猛る炎がコゴオーッ!と見えて、気が付いたら煉獄さんが刀を振り下ろして、何かを斬ったのが見えた。
「わっ…!わわわっ!! 」
子供サイズの頭部が、ひなたの近くに転がってきて、見開いたその目が空を凝視してるっ!!
「っ…キャーーーッッ!!!! 」
金色した目が怖すぎて、思わず悲鳴をあげた。
「…静かに。頸を斬り落とす事で、再生できなくする」
ひなたの隣まで戻った杏寿郎が、静かに言った。
みるみるうちに、首の方から砕けて消えた。
「消えた…」
ひなたは、何も無くなった場所を凝視したまま、呆然と呟いた。
師範は、ひなたに見せる為に、鬼の頭部をひなたの近くまで飛ばしたのだと、気がつくまで、ぼんやり意識を飛ばしていた。
「今の鬼は、まだ人をそんなに喰っていない。術も使わない鬼だった」
師範の刃がギラリ、月の光を浴び輝いていた。
「ひなた、来てみろ。二体目の鬼が潜んでいる場所は分かるか? 」
杏寿郎がひなたの肩を抱き、眼下に見えている里の方に注意を促す。