第7章 ※ 鬱金香のピンクは愛の芽生え
さっきより、歩幅を小さくしてくれているのが分かった。師範の背中が大きくて、前を行く背中だけ見て歩いていたら何かにつまずいて、ベチャッと手を着いて転んでしまった。
「…あっ」
急いで立ち上がる。煉獄さんを見失わないようにしないと。一人で慌てる。
「大丈夫か」
「ごめんなさい」
振り向いて、こちらに歩み寄った師範がひなたを見ている。
しっかりしないといけないのに…って思ったら余計に恥ずかしくなってしまった。
また無言で、師範は行くだろう。
遅れないように、気をつけようと思った瞬間、温かな大きな手がひなたの手を取り上げた。
「…いいの?…」
甘やかしてはいけないって、さっき言われたのに…。
「少しずつ慣れなくてはな」
「うん」
月明かりがあるから、真夜中でも真っ暗ではなかった。煉獄さんは普段はもっと暗い中を、雨の夜も関係なく任務に出てるんだって、ひなたは初めて鬼殺隊の日々の努力を垣間見た気がした。
煉獄さんはさっきより、少しゆっくりと歩いてくれているみたいだ。
「月が綺麗だね。狭霧山で見ると、本当にきれい」
そんな場合ではないけど、今夜のお月様が綺麗すぎて、これがお月見デートならきっと、すごくいいムードになるんだろうなあって、女の子なら思ってしまう。
任務中で、いつもより口数の少ない師範が答える。
「星も月も、この山で見ると格別だな。忘れたくない光景だ」
それから少し、二人は静かに歩いた。はちみつ色の大きなお月様が素敵で、手を繋いでいると優しい気持ちになってくる。
「…君の、君のいる時代も、美しい月が見れているか」
不意に、師範の声がした。
「う、うん。綺麗だよ」
おじいちゃんの屋敷で見る月も美しいから、思い出していた。
「…誰と、見てる? 」
煉獄さんは足を止めていた。ひなたも、立ち止まる。
「誰って…」