第7章 ※ 鬱金香のピンクは愛の芽生え
「ひなた、替えの作務衣だ」
「まだあったの? 」
煉獄さんの持ってきた荷物の中から、新しい作務衣を出してひなたに手渡す杏寿郎から受け取って、驚いた。
「これは今夜のためにとっておいたんだ。記念すべき任務初同行だからな!」
「えっ」
師範はニッコリと笑った。
「いよいよ、炎の呼吸を覚えるんだ。書で習うより、生の臨場感の中で会得した方が分かりやすいだろう!というのが俺のやり方だ」
「今から寝るんじゃないの? 」
お風呂にも入って、気持ちはお休みモードに切り替わっていた。最後の夜はぐっすり眠れると思っていたのに…。
なんとなく、煉獄さんはお仕事で夜中に出かけてる印象があったけど、それが鬼殺隊なのだ。
師範が任務の時、熟睡していい継子は、継子とは言えない…。
「靴下を履いて来ます…」
「うむ!! 」
煉獄さんが大きな声で返事して、腕を組んでひなたを待っている。
新しい作務衣に腕を通して、髪を結んでから、寝ている千寿郎君の頭を撫でた。
昼間、頑張ってたからぐっすり眠っている。
「千寿郎君、行ってくるね。お兄さん、鬼だけど頑張って来るから」
そっと部屋を出ると、師範が待っていた。
「行こう」
戸口を開けると夜の闇が広がる。夜中の空気でシン…と静まっていた。草むらから聞こえる夏の虫の声さえない。
前を歩いて行く師範と、自分の靴の音だけが、サクッサクッと響いた。どこかで生き物らしき鳴き声がした気がして、一瞬で怖くなってしまった。
「師範…」
「…ん? 」
早足で歩いている師範の背中に声をかける。ひなたは歩くのが早い方だが、師範に遅れないようにするには小走りになりそうだった。
振り向いた師範を見上げた。
「暗くて怖いです」
煉獄さんは頷いた。
「慣れないと駄目だ。いつかは、君一人での任務だってあるんだ」
「ほんと? 」
「ほんとだ」
煉獄さんはひなたの目線の高さまで身を屈めた。
「俺と同じ任務が続く訳じゃない。二人の任務は、滅多にないかもしれない。俺はいつも、暗がりを怖がっている君を心配しながら自分の任務に励まねばならないのかな」
煉獄さんの瞳に見つめられ、恥ずかしくなってしまった。
頷いたひなたを見て、煉獄さんはまた歩き出す。