第7章 ※ 鬱金香のピンクは愛の芽生え
「美味し〜い! 」
いつもの、囲炉裏を囲んでの夕食も今夜が最後だ。
今夜はお疲れ様の意を込めて、鱗滝は山の貴重な食材を惜しみなく使って、幾つものお料理をご馳走してくれた。
清流にしか生えない、川苔の鮮やかな和え物。美味しいきのこ鍋。鮎の塩焼きと甘露煮、かやくご飯にプラムのような山の実と笹で包み蒸した団子。
どれも風味が良く、新鮮な食材の持つパワーが身体に染み入る美味さだ。
ひなたも千寿郎も、鱗滝と笑いながら楽しく食べる。杏寿郎も若者らしく旺盛な食欲で、出された物を美味しそうに食べては美味いと言った。
「はは、皆、美味いか。ひなたは団子が好きだったな」
「はい!笹のお団子大好き!帰ったら作ってあって、すごく元気が出たなあ!」
鍛錬で疲れた身体に、優しい甘さのお団子を作って待っていてくれた鱗滝さんと、今夜でお別れだと思ったら…お箸を持つ手が止まる。
「鱗滝さん、ありがとうございます…」
ひなたは、その瞳に一杯涙が溜まっていくのを感じた。下を向いてお茶碗をそっと置く。
涙を拭っている仕草が、何とも可憐に見えた。我慢できなくて溢れている涙がポタッと落ちる。
皆、その様子を見守っている。
「感謝して、頂こう。ひなた」
杏寿郎の優しい声がした。
「うん…ごめんなさい。今日まで楽しかった…」
ひなたが涙を拭いて顔を上げると、皆がほっとした顔をする。女の子が泣くと三人共、どうしていいやら分からなくなるし、胸が切なくなる。
ひなたが笑うと、皆、とても優しい顔で見てくれていた。
ひなたは、まるで家族に包まれているみたいな気持ちになった。
「最後の夜は、お礼の意味を込めて、念入りに見回っておこう」
食事が終わって、お茶を飲んでいる時、穏やかな顔をして杏寿郎が言った。
狭霧山に来て、毎晩のようにこの地域の里まで巡回してきた。
麓の村にも人の暮らしがある。鬼狩りの自分にできる事は全てしておくつもりだ。美しい狭霧山への、杏寿郎の恩返しだ。