第7章 ※ 鬱金香のピンクは愛の芽生え
ゴールは鱗滝の家に帰り着く事であるから、一同は無事にゴールした。
山のあちこちから、鴉の鳴く声がする。もうすぐ夕暮れ、巣穴に戻る鳥たちも急いでいるみたいに見えて、ひなたもクタクタだった。
「ひなたさん、今日はいつもより走りましたね。大丈夫ですか?」
千寿郎が心配するように尋ねる。そういう千寿郎も、今日は泥んこ坊やだ。
「私たち、よく頑張ったよね…」
作務衣のようなベージュの着物は、擦れて汚れてしまった。
少し離れた場所を、鱗滝と話しをしながら歩いている師範の隊服はピカピカのままだった。あれほど走ったのにも関わらず、パリッとしている。
鱗滝の着衣にも乱れは全くなかった。
千寿郎もひなたも、お互いの姿を見て力無く笑いがでできた。
「泥んこ相撲の後みたいですね、僕たち」
「生きているのが不思議だね!! 」
顔を見合わせて、声が出るほど笑った。
こんなにも、強い人との差があるんだって。笑っちゃうくらい汚れてる自分達がおかしかった。
でも、清々しい気持ちだ。汗をいっぱいかいて、やれる事はやったもの。
「千寿郎君、すっごくかっこ良かったよ!脚が速いのは煉獄家って感じだね」
ひなたは千寿郎君の頑張りを見ていて、純粋に凄いと思った。
「ありがとうございます。兄上のように走る事を意識しました! 」
千寿郎も嬉しかったので素直に答える。
二人は自然に手を繋いで歩く。
その明るい笑い声は鱗滝達にも届いていた。
「ひなたも千寿郎も、良く頑張った。今夜は最後の晩になるか…寂しくなるな」
ぽつんと呟いた鱗滝に、杏寿郎は礼儀正しい、杏寿郎らしい笑顔を向けた。
「鱗滝さん。ひなたも千寿郎も、あなたから沢山の学びを得ました。俺が思っていた以上の成長を遂げている。俺もです。ありがとうございます」
「杏寿郎。お前は若く、素晴らしい柱だ。どうか.死なんでくれ」
普段は寡黙な鱗滝の、心からの言葉だ。杏寿郎はその想いを受け取る。
「また皆で鱗滝さんに会いに来ます。竈門君という隊士のことも、心に留め置きます。ご心配なさらないでください」
先日、鱗滝から聞いた、鬼の妹を連れた隊士。鱗滝の大切なその二人に、この先会うことがあるだろうと思いながら、鱗滝の肩をポンポン、と叩いた。