第7章 ※ 鬱金香のピンクは愛の芽生え
この山に来てから張り切っている千寿郎も、もちろん参加。そうなると、ほぼ素人レベル二人を杏寿郎が見る事になるので、鱗滝も手伝う事にした。
この山に仕掛けられている殺傷力の高い仕掛け、どこから何が降って来るか分からない。最初はただ怯えていたけれど、集中するとひなたにも気配を感じる。
僅かだけど、次はどこから来るか分かった。
「わっ、わあああ! 」
雄叫びをあげながらも、竹でできた槍の攻撃から避けることに成功した。
小さな自信が自分を励ましている。嬉しくて走りながら見回すと、鱗滝に庇われている千寿郎の姿が見えた。
「大丈夫か?無理はするな千寿郎」
「俺、大丈夫です!まだ走れます!! 」
千寿郎も障害物を避けて走っている。日頃から一生懸命に鍛錬しているから、杏寿郎の指導にも食らいついている。
ひなたはそんな千寿郎の姿が眩しい。頑張れ千寿郎君!
鱗滝は、千寿郎について並走しながら、さりげなく足首にかかると樹上まで吊り上げられてしまう罠の紐を断ち切った。
必死に走っている千寿郎が、あと少しで踏みそうだった。
とても危なかったが、何事も全身全霊でやるという、煉獄の血筋を垣間見た気がして、鱗滝は感心していた。
そしてひなたにも感心した。産屋敷家特有の顔をしたこの子は、見るからに華奢で修行とは程遠い雰囲気をしていながら、泥にまみれて走っている。
白い顔を蒸気で染めて、師範に追いつこうと必死な顔をする。
…普段は杏寿郎に甘えているが、この子もやる時は命をかけてやる子か…。
鱗滝はこの数日間、杏寿郎とひなたを見ていて、よくある師範と継子の関係とはまた違うものを感じてはいたが、それが何かは分からなかった。
ひなたという子は、一般的な隊士よりも頼りない印象を受ける。だが、ひなたの中には一般隊士にはない輝きがある。
…杏寿郎はひなたの中にそれを見ているのだろう。煉獄家と産屋敷家から、師範と継子が生まれるなど、両家の長い絆の歴史を、形にしたかのような二人だ…。
先日まで鱗滝の家にいた炭治郎と禰󠄀豆子兄妹のように、この二人もまた、長く続く鬼殺の歯車を回す存在となる気がしていた。