第7章 ※ 鬱金香のピンクは愛の芽生え
夢中になって走っているうちに、庵から随分遠い場所まで来てしまった。
「ここって、どこだっけ…滝の方かな」
ぐるりと開けた場所に出て立ち止まる。木々の間を走っていたのに、つい楽しくて自分がこの場所に不慣れな事を忘れてしまっていた。
広い狭霧山で迷子になってしまったら、どうしよう…。急に不安に包まれた。
でも、見渡せば野原が広がっていて、黄色や白い野の花が沢山咲いている。足元を埋め尽くす緑の草原は美しく、ひなたはその中で大きく息をした。
とても気持ちが良かった。そして思い出す。
「この場所…夢で見たかも…」
そうだ。ひなたは夢でこの場所を見ている。広い草原で、煉獄さんと一緒だったあの夢だ。
煉獄さんを追いかけた。煉獄さんは走るのが早くて、ひなたは泣きながら追いかけた。
「お願い、もう、どこにも行かないでね! 」
ひなたの元に来て、抱きしめてくれた煉獄さんに、必死で言った。
「あの時…。煉獄さん、消えちゃった…」
思い出すと涙が溢れた。煉獄さんはひなたの腕の中で消えたのだ。
「…やだ…そんなの…。煉獄さん…」
その場にしゃがみ込み、両手を草の上に着いた。ぽたり、ぽたりと瞳から溢れた涙が朝露みたいに草の上を流れて消えた。