第7章 ※ 鬱金香のピンクは愛の芽生え
小さな庵にはキッチンとまではいかないけれど、竈と炊事場のようなコーナーがある。戸棚を開けると急須や湯呑みなどお茶の道具が入っているようだ。
煉獄の家ではあまり見かけない、煉獄さんがお茶の用意をする姿が見える。囲炉裏端から眺めていると、茶筒を開けて急須の中にお茶の葉を入れた。
少し手つきが慣れてない気がして、お手伝いするべきか迷いながら見守っていると、傾いた茶筒からお茶の葉がドサっと急須になだれこんだ。
お盆にそれらを載せると、杏寿郎はこちらに戻ってくる。
ひなたと目が合うと、杏寿郎はニッコリと笑った。
「待たせたな!今、熱いお茶を淹れてあげよう!! 」
明るく元気に言って杏寿郎は、グラグラに沸いた湯を入れると二つの湯呑みに注ぐ。
「さあ! 」
「ありがと」
湯呑みを持つと、手がやけどしそうに熱い。ふうふうとして、一口飲んでみた。
「美味しい!ちょっと苦いけど…でも、美味しい! 」
なんでだろう。煉獄さんが淹れてくれたお茶が、すっごく美味しかった。
「はは、そうか。身体が冷えていたからだろう」
ひなたが飲むのを見守っていた杏寿郎が、嬉しそうな顔をした。いつもとは違う顔だ。継子に喜ばれ、ちょっと嬉しい。
自分では、滅多にお茶を淹れる事がないので若干、苦いような気はするものの、ひなたと同じく濡れていた杏寿郎もまた、温かい飲み物は美味しかった。
萩さんが淹れてくれるお茶の方が随分と美味いが、ひなたとこうして飲むお茶もまた、美味いと思った。
「鱗滝さんと千寿郎君、無事に帰れたと思う? 」
体操座りにした膝の上に湯呑みを置いて、ひなたが呟いた。前髪から雫がぽたり、と落ちる。産屋敷あまねによく似た美しい髪。滴る水も、ひなたを妖精のように見せていた。
炎を挟んで、そんなひなたを見ていた杏寿郎は、ふと自分に戻ると凛々しいいつもの声になった。
「大丈夫だ。二人は雨が降り出す前には戻っている筈だ。こちらの事も、この庵にいると分かってくれていると思う。心配するな」