第7章 ※ 鬱金香のピンクは愛の芽生え
「早く脱いだ方が良い。そのままでは風邪をひくぞ」
こちらを、じっと見ている杏寿郎と目が合った。
「濡れた服はそこに置いておけ。身体に纏うものを探すから」
囲炉裏で火の調子をみつつ、ひなたを案じて立ちあがろうとした杏寿郎に申し訳なくて、ひなたは立ち上がった。
「いっ、いい!自分で探すから! 」
「だったら早くしろ」
何度も言っているのに…明らかに身体が冷えているだろう継子が気になって仕方がない。
ひなたは、部屋の奥にある押し入れに走り寄って開けてみた。何か着るもの…身体に掛けるものは…。
「煉獄さん。タオルケットみたいなのが2枚あるよ」
綿で出来た薄い布が、綺麗に畳んで入れてある。引き出して広げると、寝る時に掛ける為の物みたいだ。
「これでいい? 」
「それで身体を巻いて、ここに座るといい」
「うん」
煉獄さんの背後にまわり、部屋の片隅で服を脱いだ。下着までビチャビチャで、服はズシリと重くなっていた。脱いで分かった。
広げた布を肩から羽織ってみると、身体がスッと軽くなった。
煉獄さんの近くに行くと、囲炉裏の火の側にひなたを座らせる。
「相当冷えた筈だ。身体を温めろ」
「はい」
煉獄さんの金色の髪も濡れていて、毛先の赤い部分から雫がぽたり、と滴っている。濡れた髪が艶やかな頬に付いて、煉獄さんの横顔が美しかった。
「煉獄さんも、早く着替えて」
煉獄さんの横に座り、囲炉裏の炎が柔らかく燃えるのを見る。外は豪雨のようだ。打ち付けるような風も混じっている。
「嵐になったな」
杏寿郎が呟く。休憩している間に小降りになるのを待つつもりだったが、雨足はどんどん激しくなっていた。
「ひなた。今夜はここに留まる事にしよう」
ひなたは杏寿郎の顔を見上げた。
「えっ…は、はい…」
鱗滝さんの家は狭霧山の麓にある。ここからは随分と遠い。きっと煉獄さんだけなら帰れる。だけど、私がいるから…。煉獄さんは庵に留まる事にしたんだ。
と、ひなたはすぐに理解できた。
…けど…。
今夜、誰もいない山の庵に、煉獄さんと二人っきり…。