第3章 必要とされないモデル
ヘアメイクの女性が、いつものメンバーを伴って現れた。
彼女達とは馴染みがあった。何度も撮影現場で一緒になっていたし、いつも優しく接してくれていた。皆の顔には戸惑い、不満が浮かんでいる。手にした花束を、そっとひなたに差し出した。
「ひなたさん、寂しいです…まだモデル続けてくれますよね…」
可憐なブーケを受け取ったひなたは、儚く笑った。
「今月…一杯は、また現場でお会いするかもしれないです」
「そんな…ひなたちゃん…」
「…ありがとうございました」
ひなたは頭を下げて、ヘアメイクさん達にお別れを言った。ふと、目を向けると、ケータリングのテーブルで談笑する人の中に、愛ちゃんの姿が見えた。
愛ちゃんのいる場所が、やけに遠くに感じた。
その視線を感じたか、愛ちゃんがふと、こちらを見る。
離れた場所にいる二人の視線が重なった…と思ったのは気のせいだったのか、愛ちゃんは携帯の画面に視線を移した。
「ありがとうございました! 」
ひなたはスタジオに向かって、挨拶をした。ぺこりと頭を下げて、荷物と花束を抱えてドアへと歩みだす。
ぱら、ぱら…そして大きくなっていく拍手の中、ひなたはスタジオから出た。胸が苦しく、でも、涙は出なかった。
そのままエレベーターに乗り、一階を押して扉が閉じると、背後の壁にズリズリ…と背中から崩れる。
…失った…大切な仕事を……。
私は、一体、何だったのだろう…
この世界の、私は、何の価値があったのだろう…。