第7章 ※ 鬱金香のピンクは愛の芽生え
お昼を食べたのは日差しの柔らかな木陰で、草むらの広がる休憩にはもってこいの場所だ。お腹が一杯になると、千寿郎もひなたも眠気が襲ってきた。
特に、千寿郎は敷物にしていた薄い布の上に、小さな身体を横たえて、今にも眠りそうに大きな瞳を閉じようとしている。
ひなたは、自分の膝の上に、千寿郎の頭を置いた。
千寿郎の小さな寝息がひなたに伝わってくる。金色の柔らかな髪を撫でた。
「千寿郎君、今日すっごく頑張ったね。ね、鱗滝さん」
「ああ」
鱗滝も千寿郎を見つめて、そっと頭を撫でた。
「千寿郎はワシが連れて先に帰っておく。杏寿郎、お前達はまだ鍛錬が残っているだろう。後からゆっくり帰って来い」
千寿郎を撫でるひなたを、少し離れた場所に座って見ていた杏寿郎は、そのきりりとした眉を上げて鱗滝に微笑んだ。
「そうさせてもらうとするか!今夜は天気が崩れるようだな、ひなた、早めに切り上げ帰ろう」
「うん」
「豪雨になるかもしれん。二人共、暮れる前に帰って来い」
鱗滝は山の向こうの空を見上げて言った。向こうの山にかかる霧の様子や湿気を感じているようだ。
鱗滝と別れ、杏寿郎とひなたは鍛錬に戻る。午後になり、明るかった昼前に比べて天気に翳りが見えている。
杏寿郎も感じているのか、時折、空を見上げていた。
「ひなた、呼吸は随分良くなった。全集中の呼吸は体格には関係なく、心肺機能を最大限に高めた結果、通常とはかけ離れた強さを出せるようになるんだ。ひなたのように華奢な女の子でも、存分に力を発揮できる。鬼殺隊には女子も沢山いるが、皆、其々の呼吸を使っている。頑張ろう」
「はいっ! 」
杏寿郎はひなたに、より詳しい呼吸のやり方を伝授していく。
「肺に酸素を取り込め!ここだ、集中しろ」
「…っうっ! 」
ひなたは思わず身体を曲げた。大きく息を吸い込んだひなたの胸の下辺りを、杏寿郎が手で圧迫したからだ。
顔が赤らみそうになった。鍛錬とはいえ、微妙な場所を師範に触れられ、普通の女子のひなたは恥ずかしく照れた。
師範は何とも思っていないようだ。
「ひなた、こちらを見ろ」
続きをする杏寿郎に合わせ、また呼吸に意識を集中させる。