第7章 ※ 鬱金香のピンクは愛の芽生え
「ひなた!君も来るか⁈ 」
澄み切った水の中から叫んでいる杏寿郎の声が聞こえてきた。
遥か下から響いているので、聞き間違いかもしれない。
「…煉獄さん、何か言ってる? 」
「さ、さぁ…離れているので、よく分かりませんね…」
千寿郎君と二人、顔を見合わせていると
「ひなたも飛べるかと、聞いているな」
鱗滝さんの静かな声が、真後ろからした。
「うっ…鱗滝さん、もう少し低い場所から飛べそうな所って、ないのでしょうか…」
ひなたの切実な瞳が、助けてと言っておる…。
鱗滝は、ちょっとズルだが、ひなたを連れて崖下へと降りられる、秘密のルートを案内する。
「兄上に、怒られませんかね…? 」
おずおずと言う千寿郎に、天狗の面は渋い声で答えた。
「もしも怒ったら、ワシから杏寿郎に話す。まず低い場所から始めて、徐々に崖の上から飛べば良い」
「ありがとうございますっ!鱗滝さん大好き! 」
ひなたは鱗滝さんの腕を抱きしめた。鱗滝さんは剣士には大層厳しいと聞いたけど、ひなたにはとっても優しい。
杏寿郎が厳しいから、きっとフォローしてくれているのだろう。
鱗滝は家でも、ひなたの喜びそうな事をさりげなくしてくれる。例えば、ひなたの部屋には可愛い野の花を飾っていてくれたり、ひなたが鍛錬から帰ると、甘いお菓子…きな粉のお団子を作って待っていてくれた。
ひなたは鱗滝さんの事が大好きで、暇があると鱗滝さんとお話ししたりしている。色々とミステリアスな所が面白い。
産屋敷輝利哉といい、素敵な年の取り方をしている鱗滝もまた、魅力溢れる人物だとひなたは思った。
杏寿郎がさっき飛び込んだ崖の、半分くらいの場所へと降りて来たひなた達は、近くなった水面を見てホッとした。
「ひなたさん、ここからなら、飛べそうですか? 」
「うんっ!できそうだよ、千寿郎君っ!鱗滝さん! 」
水の中はかなり冷たいのか、杏寿郎は水から上がっていた。なかなか来ないひなたを待ち、筋トレ的な事をしている。
水に濡れた服がちょっと、艶めかしい師範に叫んだ。