第7章 ※ 鬱金香のピンクは愛の芽生え
小さな息を吐いて、なんとか集中しようとする。
大好きな人達の顔が浮かんだ。お父さん、お母さん。そして、大好きな大好きなおじいちゃん。私、産屋敷の人間として、頑張る!
それから、不死川さんの顔も浮かんだ。
恋人なのに、離れちゃって…。不死川さんに会いたい。不死川さんが近くにいると感じるドキドキ…。不死川さんに抱きしめられた時の、甘い官能的な感覚を、もう一度味わいたいと思った。
…やっぱり、生きて戻らなきゃ…。
ひなたは立ち上がった。狭霧山の空気を大きく吸い込む。肺に送られる空気をもっと…肺を大きくして…。
…ドクン!
呼吸がはまっていく。自分は何かを掴んでいる…確かに!
「そうだ…。ひなた、呼吸ができている」
ひなたを静かに観察している杏寿郎は、ひなたが呼吸に入っている事が分かった。
「反応が早い…。ひなた、恐怖は捨てられる」
鱗滝の言葉に頷く。ひなたは今なら、超人的なパワーを発揮できそうな気がした。不思議に怖い気持ちも薄らいでいる。
「ひなた、俺が飛ぶから見ていろ」
そう言うと、杏寿郎は断崖の淵に立った。杏寿郎の背中にまで意識が届き、見えない気炎が杏寿郎を包んでいるように見えた。
「全集中の呼吸…」
杏寿郎が静かに呟いている。美しい身体が服の上からも躍動しているのが分かる。杏寿郎が一瞬、羽で飛んだかのように見えた。空中を蹴るようにして高く舞い、重力を無視して跳躍した。
なんと、美しい…!!!!
と言うのが、真っ先に出た感想だった。落ちる、という事ではないことを、ひなたは間近で見て学んだ。
行きたい方へ飛んで行く。
そこが崖の下の滝壺だっただけ。距離も関係ない。
呼吸を使って移動する事。その意味が分かった。
「兄上! 」
「煉獄さん!! 」
ひなたと千寿郎、鱗滝は崖から下を覗き見た
遥か眼下の滝壺に、杏寿郎の姿がある。水の中で杏寿郎が立ち泳ぎをしているのが見えた。
「煉獄さぁぁぁぁ〜んっ!! 」
凄く、かっこよかったです!!
って、叫びたいくらい、素敵な姿を見てしまった。