第7章 ※ 鬱金香のピンクは愛の芽生え
「怯えながら暮らさなくて良いのは良いね」
杏寿郎もひなたに視線を移して頷く。
「俺はそんな世界にしたい。太陽が照らす昼間だけではなく、月夜も、人々が安心して過ごせる場所を守りたい。闇に紛れ悪が蔓延る世界から、千寿郎や罪なき人を守りたいんだ」
杏寿郎はひなたに向き直る。
「ひなた。俺は、君にも無事に生きて欲しい」
杏寿郎の瞳に真剣な思いが宿っているのをひなたは感じた。目を伏せる。
…煉獄さんは、いつも、そんな想いを抱えて生きているんだ。自分の大切な命を投げ打ってまで、人の命を守る為に…。
ひなたは胸が一杯になる。無限列車での煉獄さんの事を思い出した。
「煉獄さん。私も、煉獄さんを手伝うから!煉獄さんだけを、苦しい闘いの中に行かせない…から…」
涙がじわっと溢れて来た。この時代で、無限列車の事を知っているのはひなただけだ。だから、言えないけど、ひなたなりの想いは伝えたかった。
「ひなた…」
杏寿郎は、目の前のひなたが悲しみを抱いているのを感じた。とても不思議な子だと思う。何不自由のない場所から、この時代に逆行するように何度も現れては、自分の前で色々な顔を見せる。
時に辛そうに、でも、一生懸命な姿も沢山見せて。
今も、泣きそうにしながらも自分を支えたいと言う。
杏寿郎は産屋敷耀哉に託された、ひなたを回復させ鬼殺隊士にする、という事の他にも、何かがあるのではないかと思ってしまうのだ。
「ひなた、継ぐ子というものは、様々な経験を重ねて成長していくものだ。そのできる限りを師範として共有しよう。何でも話してくれ」
「うん…」
師範としての言葉、それ以上の温かさを感じさせる杏寿郎の話し方。目の前にいる師範に応えて行きたい、だけ、なのか。それ以上の想いがあるのか。
木立の中、光に照らされた美しい杏寿郎を見上げてひなたは思った。