第7章 ※ 鬱金香のピンクは愛の芽生え
山の奥に続く道の途中には、大きな滝がある。切り立った崖の上から送られる水が、遥か下の滝壺まで勢いよく流れている。
ここは鱗滝さんが修行に使う教育現場だと、鱗滝さんから案内された時に聞いていた。
「ここから落ちたら、失神で済むでしょうか…? 」
「済まないよね。離れよう、千寿郎君」
案内された時、崖の上から遥か眼下を見下ろして話している杏寿郎と鱗滝さんの後ろにいたひなたと千寿郎は、ここが鱗滝さんの使う【水の呼吸】の修行には欠かせない場所だと聞いて、震えながらその場所を離れた。
「水の呼吸だから滝を使うんですね、きっと…。兄上は炎なので、良かったですね…。ひなたさぁん…」
「危ないよね!炎で良かったぁ! 」
と、話しながら二人で歩いて行こうとしたら、活き活きした杏寿郎の声がひなたを呼び止める。
「ひなた、やはり狭霧山を選んで正解だったな!こんなに素晴らしい修行の場所はそうそうないぞ!是非、この滝を使わせてもらおう! 」
「いや〜ぁんっ!! 」
千寿郎とひなたは同時に叫んだ。
そんな事があってから数日後の今日、杏寿郎はひなたを滝に誘った。
「鱗滝さんと千寿郎とは昼頃に落ち合う事になっているから、少し時間に余裕があるな。ひなたに見せたい場所があるから、行こう」
「うん。どこ? 」
二人で山路を歩いていると、あちこちで木々の間を可愛いらしい野鳥が飛んでいるのが見える。チッチっ、と声を響かせては茂る葉の中、枝の中の巣にいる家族と会話しているのかもしれない。
ひなたは歩きながら顔を上げて微笑んだ。清々しい森を散策していると、とっても幸せな気持ちになったからだ。
「なんだか良いね、鳥の声を聞いて癒されちゃう」
杏寿郎も頭上を見上げて、優しい微笑みを浮かべた。
「穏やかな景色だな。ここに来てからずっと、朝になり森を歩く度に思うんだ。こんな風に自然の息吹を感じて人も、動物も、何も怯える事なく暮らせたらと思う」
ひなたは隣を歩く杏寿郎を見上げた。