第7章 ※ 鬱金香のピンクは愛の芽生え
早朝から山の中を走っていたひなたは、既に疲れていたし弱気になっている。だいたい、この山自体が神がかっているような神秘的な山で怖いのだ。
緊張感半端ない。煉獄さんは優しいけど、指導は厳しい。
ひなたはしゃがみ込んだ。膝小僧は土で汚れて、服も数カ所切れている。
「疲れたの…。ずっと走ってるし…」
本当言うと、怪我が怖い。モデルのお仕事をしていたから、傷を創るのは怖くてたまらなかった。
「立て、ひなた。俺が鬼なら、君を殺している」
「いや…って言ってるじゃん…」
煉獄さんの静かな声がちょっと怖い。けど、すごく疲れた。
「ひなた」
ひなたは渋々立ち上がった。頑張りたいけど、煉獄さんについて行くので必死で、目に涙が滲みそうになった。
立ち上がったひなたを見て、杏寿郎は呼吸を伝授していく。
肺に空気をたっぷり入れ、筋肉の隅々に送る。体温を徐々に上げながら筋肉と心臓を意識して…。
ひなたは、これまでやってきたように目を閉じて身体に意識を集中していく。
「…そうだ。そのまま走って飛び上がって…」
杏寿郎の声がひなたの意識の深層に沁みていく…催眠にかかったように、ひなたはその言葉を受けて走り出した。身体が軽い。
駆け出すと空気に身体が包まれているようだ。走ると言うより、一歩が飛ぶように跳躍できている感覚がある。
「そのまま、大きく跳んでみろ! 」
一歩、二歩。杏寿郎の声がずーっと後ろから聞こえた。
ふわっ!身体が浮き、イメージした通り脚が空を蹴り木の幹がすぐ近くに見えた。
「わわ…! 」
「枝に飛び乗れ!! 」
煉獄さんの声が、近くで響く。自分を追いかけて来てくれている。
ひなたは嬉しくなって、目の前に迫ってきていた比較的低い木の枝へと飛び込んだ。
ちょっとふらついたけど、木の枝に着地出来ている!!
「煉獄さん!私、木の上に乗ってる!! 」
人の背丈より低い位置だけど、普通はジャンプでは跳べない高さ!!
近づいて来た杏寿郎は頷いた。
「できると言ったろう! 」
「うん! 」
高い場所から見る景色は、早朝から地面を走っていた時の目線よりも広く、美しい林が広がる景色だった。
「降りておいで」