第7章 ※ 鬱金香のピンクは愛の芽生え
「れっ…煉獄さんはどこ…? 」
あれれ…?今、ひなたの前を走っていたはずの煉獄さんが突然消えた。
「煉〜獄〜さぁぁぁん!! 」
心細くなったひなたは、煉獄さんを呼んだ。狭霧山の、誰もいない林の中で、一人取り残されたようで不安がつのる…。
シン…としていて怖い。朝の冴えた空気は澄んでいて、ハァハァ息をしているのが自分だけで寂しい。世界に一人だけみたいだ…っ!!
「ひなた、ここだ! 」
ズァッサァッ!!
「…っわぁああっ! 」
キョロキョロしながら煉獄さんを探して歩き出したひなたの前に、杏寿郎の大きな身体が飛び降りて来た。
一瞬の事で驚くひなたに、杏寿郎はキラキラした笑顔を見せた。
「瞬時に飛び上がり木に登った。鬼の攻撃から身を躱し、次の攻撃をする為に素早く宙を飛び上がるんだ。呼吸を体得すれば難しい事ではない。ひなたもやってみよう! 」
「いや…無理じゃない…かな…」
「そんな事はないぞ!俺が出来た。君にも出来る!! 」
ひなたは自信満々な杏寿郎の顔を見ていて、さすがにこれは無理だと思った。ひなたは日頃の訓練のおかげで、かなり速く走る事ができるようになったし、動きも前に比べて俊敏になった。
呼吸も練習している。前の自分よりも強くなった気はするけれど…。
「映画のアクションシーンみたいな事が、普通の人間の私にできるわけないよ…」
煉獄さんは走っていたのに急に木の上に飛び上がったのだ。ひなたには見えないくらい素早い動きだった。
煉獄さんは見るからに普通の人ではないけど、ひなたは普通の女の子だ。
…とひなたは思っている。
困った顔をしているひなたを見て、杏寿郎は不思議そうな顔をした。
「何を言ってるのか、よく分からんが…。自分で自分に限界を作るのはやめろ。自分には出来ない。やっても無駄などという考えは今すぐに捨てて、やるんだ。君も強くなりたいんだろう…? 」
煉獄さんの言葉は、煉獄さんの身体の奥から響いてくるようだった。
煉獄さんにとって、きっと、真実だからだろう。