第7章 ※ 鬱金香のピンクは愛の芽生え
「煉獄さん、遅いね。道に迷っちゃったのかなぁ」
「杏寿郎のことだ。それはあり得ない。慎重に見て回ってるんだ」
鱗滝が言った。綺麗に正座をして、出来上がったお料理を前にしているその佇まい。
ひなたの隣に座っている千寿郎が、ひなたの耳に囁いた。
「鱗滝さんって、柱みたいな感じしますね」
「うん。なんか煉獄さんとか、宇髄さんみたいだね」
二人でコソコソと囁き合った。鱗滝さんに感じる雰囲気が、柱を見た時に感じるパワーとかオーラとか、そういう類の超人の持つ強さと同じだからだ。
「杏寿郎は鍛錬も兼ねて、山を見て回っているのだろう。この山は全てが、修行する者のためにあるような山だ。迂闊に近寄れば命を落とす。杏寿郎は明日からの計画を練っているのかもしれない」
静かに語る鱗滝さんの言葉に凍りつきそうになる。千寿郎も、聞いただけで怖くなってしまった。ひなたの事が心配になって、その手を握る。
もちろん、ひなたの手も震えていた。でも、千寿郎君の優しい励まし、ひなたを支えてくれようとしている気持ちを感じて、千寿郎にニッコリ笑った。
「千寿郎君がいてくれて良かった。ありがと」
「俺も、お手伝いしますから」
千寿郎君って、なんて良い子なんだろう。知り合えて良かったと、ひなたの心が温かくなった。
ガラガラっと戸口が開き、すっかり暗くなった表の空気と共に、杏寿郎が入って来た。
「あっ!兄上、お帰りなさい! 」
「煉獄さんだ! 」
戸口に向かって駆け寄る二人に頷くと、杏寿郎は履き物を脱いで囲炉裏の側に座った。
「鱗滝さん、ありがとうございます。頼んでいた以上に準備してもらって、感心した。明日から早速使わせていただきます」
大きな瞳を嬉しそうに輝かせ礼を述べる杏寿郎に、鱗滝も頷き答える。
「気に入ってくれたか。柱が満足するような物が出来ているか心配ではあったが…。食べなさい。二人も杏寿郎を待っていたぞ」
杏寿郎の帰りを待っていたひなたと千寿郎に微笑む。
「良い匂いだ。ひなた、千寿郎。いただこう! 」
「はーい! 」
鱗滝と杏寿郎は狭霧山の話をしている。囲炉裏を囲んで美味しい夜ご飯を食べながら、夜がゆっくりと過ぎていく。