第7章 ※ 鬱金香のピンクは愛の芽生え
庭先に三人で並んでいると、呼び鈴を押してないのに、中から人が出てきた。
「ああ、よく来たね」
雲の模様が印象的な上着を着た初老の男性らしき人だ。しっかり太い声をしている。男性の顔は天狗のお面を着けている為、見えなかった。
「……! 」
ひなたと千寿郎は驚いて固まりかけた。家の中から、何故お面を…。
「お久しぶりです、鱗滝さん!弟も一緒に世話になります。こちらが、俺の継子の産屋敷ひなたです。どうか、ご指導宜しくお願いします」
杏寿郎は天狗さんと旧知の仲なのか、親しげに挨拶をした。鱗滝さん、と言われた天狗さんは、初めは千寿郎君を眺めて頷き、続いてひなたの顔を見た。
天狗さんが一瞬、ピクリとする。
「…産屋敷…さんか…」
ひなたを見たこの時代の人がよくする反応だ。きっと、ひなたが産屋敷あまねに似ているからだろうと、ひなたは思っている。
「要に託した手紙に書いた通り、産屋敷家から隊士になりたいと志願しました。素質のある子です。ひなた、こちらは元柱で、今は鬼殺隊に入る前の剣士を指導しておられる『育て』の鱗滝左近次さんだ」
杏寿郎に紹介され、ひなたは鱗滝さんの前に歩み出た。
「宜しくお願いします。煉獄さんの継子の産屋敷ひなたです」
丁寧に頭を下げて挨拶をするひなたを、鱗滝さんは天狗の面の奥の瞳でじっと見ていた。
「…んん…産屋敷の家から剣士が出るとは…お館様も嬉しく思っておられる事だろう…」
感慨深そうに、深い響きの声音で呟いた。
「入りなさい。協力しよう」
鱗滝さんは中に入るように言い、杏寿郎達は笑顔を交わしてお邪魔した。
「わぁ…なんか素敵…! 」
「ひなたさん、囲炉裏がありますよ」
中はすっきりと広くて、お料理をする土間や、囲炉裏を囲んでご飯が食べられる黒光りしたピカピカの床がきれい。奥の方は襖で隔てられた部屋があって、凄く住み易そう。古風な庵という感じで、そういうホテルも最近見るし、なんだかオシャレな感じがした。ワクワクする。
「狭い小屋だが、寛ぐといい」