第7章 ※ 鬱金香のピンクは愛の芽生え
「それでは私は失礼致します。一週間後にお迎えにあがりますので」
「ご苦労様でした!気をつけて帰ってくれ! 」
「はい。煉獄様」
運転手さんが車に乗り、元来た道を引き返して行く。今まで一緒にいた人が帰ってしまうのは少し寂しい。ひなたは、どんどん小さくなっていく黒く丸みを帯びた車体を見つめていた。
「さて。ここからは歩きで行こう!もうすぐだ」
「はいっ、兄上」
「うん」
木漏れ日が燦々と降り注いでいる木々に囲まれた道を、杏寿郎を先頭にしてひなた、そして千寿郎が歩いて行く。山路なので、慣れなくて足がずるっと滑りそうになった。
「あっ、ひなたさん!大丈夫ですか⁉︎ 」
ひなたの後ろを歩く千寿郎君が心配そうな声をあげると、前を歩いていた杏寿郎が振り向いた。
「ひなた、歩きにくいか?荷物を持とう」
「いっ、いいの。大丈夫…」
緩やかだが登り坂が続いているので、荷物を持っていると少し疲れてきていた。でも、煉獄さんも千寿郎君も自分の荷物を持っている。だから黙って頑張るつもりだった。
「…あっ…! 」
ひなたの腕が急に軽くなった。杏寿郎が荷物を取り上げてくれたからだ。
「ありがと…」
「もう少しだ!頑張れ」
ひなたを励ますように言うと、軽快な足取りで歩いて行く。荷物が無くなっただけで、すごく歩きやすくなった。
「ひなたさん、頑張りましょう!着いたら休憩できますから」
「うん! 」
千寿郎君も一生懸命に歩いている。間もなく、少し開けた場所にぽつんと一軒の民家が見えてきた。
「わぁ!お家がありますね、兄上」
「ああ!あそこだ。着いたな」
「わぁい! 」
家が見えて、元気を取り戻したひなたと千寿郎は、急に早足になって歩き出した。杏寿郎にくっ付くようにして、早く辿り着きたいとはしゃぎながら急ぐ。
「すごーい!映画で見るようなお家だぁ! 」
遠くから見ると、こじんまりした民家かと思ったけど、近くから見るとしっかりとした造りの平屋だ。全体的に質素な雰囲気を漂わせているが、手入れが行き届いている。