第7章 ※ 鬱金香のピンクは愛の芽生え
今までお握りを握った事なんてなく、下を向いてしまったひなたに、三人は視線だけで言葉を交わした。
そして、沈黙を破るような杏寿郎の声が響く。
「何のお握りか中身が気になるな!可愛い形だ、なぁ!千寿郎!! 」
千寿郎君は高速で何度も頷いた。
「一個しかないみたいで残念だなぁ!お、俺もそれが食べたいです! 」
運転手さんも慌てて頷いた。
「中身は昆布かも知れませんね!いやあ!美味そうだ! 」
ひなたをチラチラ見ながら、この場をなんとか元の和気あいあいとしたお昼ご飯に戻そうとしている。
気を使わせているのがわかり、ひなたは余計に恥ずかしくなって頬がピンク色に染まった。
杏寿郎は、そんなひなたを慰めるようにバクリっ!とお握りを大きく噛んだ。
「ウッ…! 」
様々な攻撃を全て躱してきた猛者の杏寿郎の口から小さな悲鳴が漏れた。
…死ぬほど、塩辛い…。
生まれて初めて口にするような塩分の握り飯に身体は驚いたが、目の前に座っているひなたは、少しだけ目を上げて杏寿郎を見ている。
…きっと、型はボロボロでも味で勝負したいのだろう…そんな瞳だ…。
「…う、うま…いぞ!疲れた時に食べたい味だな!! 」
明るく笑って言った。運転手さんと千寿郎がホッとしているのが伝わってくる。
「……ほんと…? …」
杏寿郎を見つめていたひなたが、小さな声でつぶやいた。
「疲れた時に、食べたくなるくらい、美味しいの…? 」
まだ恥ずかしく、声が小さくなる。でも、美味しいって言ってくれた。
可愛いらしい瞳で一生懸命に杏寿郎を見ている継子が、一瞬我が子のように思えた。
「…俺がとてつもなく、疲労困憊した時、作ってくれ」
でないと食べられない位塩辛い。でも、可愛い継子だ、ひなたは。
ひなたの顔にみるみる笑顔が戻ってくる。
「うん!煉獄さん、その時は言ってね!千寿郎君も、お勉強で疲れた時は作るね! 」
頬をピンクにして嬉しそうに言ったひなたの笑顔が可愛いくて、その場は再びほっこりムードに戻っていた。