第7章 ※ 鬱金香のピンクは愛の芽生え
胡座をかいて座り、お握りを手に持って笑顔で食べる様子は、元気そのもので可愛らしかった。
…煉獄さんの楽しそうな顔、良いな…。
ひなたは、目の前でおむすびにパクついている杏寿郎を見ながら思った。師範は凄くデキる男、という印象を受ける人だけど、食べる時は可愛い。
萩さんがお握りを沢山作ってくれた理由が分かった。大きなお握りが沢山詰められたお重は、萩さんの愛情なんだなぁって。
「ひなたさん、もっと食べてください。ひなたさんはいつも少ししか食べないから」
千寿郎君がひなたを気にして言った。
「そうだぞ。しっかり食べないと体力が持たないぞ。ひなたは細い」
杏寿郎もひなたの細いウエストを見て言った。
「食べてるよ。美味しいもん」
杏寿郎はお重に手を伸ばして、お握りをもう一つ取るとひなたに手渡しした。
「ほら、ひなた。俺もいただこう。…ん? 」
ひなたにお握りを渡して、もう一つ手にした杏寿郎は不思議な顔をした。
「どうしました?煉獄さん」
運転手さんが尋ねる。
「兄上、どうしました? 」
卵焼きを食べていた千寿郎君も杏寿郎を見た。
皆の視線を受けた杏寿郎は、お握りを皆に見せた。
「何でもないが、このお握りだけ形が違うから不思議になったんだ」
お握りに顔を近づけて見た運転手さんと千寿郎君は同時に頷いた。
「本当ですね」
運転手さんは自分の食べている立派な形のお握りと見比べて言った。
「兄上、萩さんのお握りではない形ですね、いびつですぅ」
千寿郎君も小首を傾げている。ひなたは恥ずかしくなった。
「それ…私が作ったの……」
明るい場が瞬間凍りついた。
ご飯が熱くて、萩さんみたいに三角には形作れなかったから、何回か握って海苔で巻いた。もちろん俵型とも言えなかった。海苔にはご飯粒がくっ付いていた。