第7章 ※ 鬱金香のピンクは愛の芽生え
「ひなた、具合はどうだ? 」
「ん、良いみたい」
お重の入った風呂敷包みを持った杏寿郎が尋ねてくる。空気は薄い感じはするけど、山の澄んだ空気と森林の香り、ひなた達のいる場所から広がる景色の美しさに、気分は癒されていた。
「随分と上ってきましたね。見晴らしが良いです」
運転手さんも、ずっとハンドルを握っていたからか、リラックスするように言った。
「この辺に座ろうか」
低い草や黄色い野の花が優しく生えている場所で、杏寿郎は荷物を下ろした。続いて千寿郎が手にしていた水筒を置いた。
「お腹が空きましたね! 」
千寿郎君はひなたが座りやすいように、手拭いを広げてくれた。
「どうぞ、ひなたさん」
自分もその横の柔らかな草の上に腰を下ろして、千寿郎は笑顔でひなたに座るように言った。
真っ白な手拭いの上に座るのは申し訳なかったけど、千寿郎君の好意が嬉しくてひなたは甘えることにした。
「ありがとう!千寿郎君」
杏寿郎は風呂敷包みを開いて、立派な塗り物の艶やかなお重を開けた。
「さあ!戴こう…美味そうだ! 」
歓声が上がる。萩さんの作ってくれたお弁当は彩りも美しい。海苔の隙間から溢れるように見えている紅鮭の身と筋子がなんとも食欲をそそる。鯛の塩焼きを見た杏寿郎は嬉しそうな顔をした。
「鯛の塩焼きか! 」
「煉獄さん、好きなの?鯛の塩焼き」
皮の焼き目がきれいな鯛の切り身をお箸で取った杏寿郎に聞くと、きらきらした目でひなたに笑顔を返してくる。
「ああ!好物なんだ。ひなたにも取ってあげよう」
杏寿郎は綺麗な箸使いで切り身を取ると、ひなたのお皿に乗せてくれた。
「ああ、とても美味しいです」
お握りを頬張った運転手さんも満足そうに微笑んでいる。
「美味しいですね! 」
千寿郎もいつもより食欲が増しているかのように、お握りを二つ三つとよく食べている。
「美味いっ!! 」
杏寿郎もお腹が空いていたのか、もりもりと食べ進んでいる。萩さんのお弁当は食べ慣れたおふくろの味なのかもしれない。