第7章 ※ 鬱金香のピンクは愛の芽生え
「ところで、何処に向かってるの? 」
車はいつの間にか山道に入って来ていた。黒塗りのタクシーは舗装されていない道の上を慎重に走っている。なんとなく、地元の人しか知らない場所、というか滅多に人も通らない場所なんじゃないかと思う程、木々に囲まれた森だ。
車が坂道をずっと上っているのが気になり始めたひなたは、杏寿郎に恐る恐る尋ねてみた。
「ここから先は狭霧山だ。今回の修行の場所だ。良い所だろう! 」
「えっ…」
狭霧山…山なのは分かるけど、随分と標高の高い場所だ。
「兄上、心なしか息が苦しいように感じます…」
それまではしゃいでいた千寿郎も、普段自分の暮らす都会とのあまりの違いに、やや緊張した面持ちをして言った。
「空気が薄いのは本当だ。今回、ひなたの呼吸をもっと鍛える為にこの場所を選んだ。肺の鍛錬になるし、ここには素晴らしい師がいる。呼吸を極める事ができるぞ、頑張ろうな!ひなた! 」
緊張感で余計に息苦しくなってくる…。ひなたはこれから始まる鍛錬を想像しただけで泣きそうになった。
「ひなたさん、大丈夫ですか?なんだか顔色が青白いです」
「だ、大丈夫…」
思えば、昨日までの鍛錬も甘いものではなかった。煉獄さんは優しいけど、鍛える時は真剣さを求めてくる人で、ひなたは女の子だけど、クタクタになる程、特訓を受けていた。
煉獄さんの教え方が上手いので、ひなたは体力をつけつつ、こなして来たのだ。
「ひなた、車に酔ったか?山道だったからな。そろそろ休憩でもするか」
杏寿郎は胸のポケットから懐中時計を出して時刻を確かめると、運転手さんに伝える。
「了解致しました」
車は適当な場所で停車して、車から降り立った杏寿郎達は少し歩いて景色の良い場所までお弁当を運んだ。