第7章 ※ 鬱金香のピンクは愛の芽生え
玄関で見送ってくれる萩さんに挨拶をして家を出る。
1週間分の荷物を持った杏寿郎、ひなた、そして千寿郎君。本当は千寿郎君は留守番の筈だったけれど、合宿と聞いてどうしても行ってみたくなったようだ。
日頃、お家の事を頑張ってやっている千寿郎君の、珍しく自分から行きたいと願い出てきた希望ならば、杏寿郎も連れて行かないわけはなく、ちょっとした旅行気分の千寿郎とひなたを連れて行く事になった。
「萩さん、父をお願いします。何分、ご迷惑をお掛けすると思うが」
杏寿郎は、一人残していく槇寿郎のお世話をしてくれる萩さんに頭を下げた。
「大丈夫です。槇寿郎さんの事なら心配なさらず、鍛錬を頑張って来て下さい」
「悪いな!それでは行って来ます! 」
「行って参ります! 」
「行って来ます」
千寿郎とひなたも萩さんにお礼を言って手を振る。家の前には迎えの車が来ている。千寿郎とひなたがいるから、そして今回の合宿の場所は遠いので、杏寿郎は車を用意してくれていた。
「では、ひなたちゃん、千寿郎さん、気をつけてね! 」
車の窓を開けると、萩さんが心配そうに二人に話しかける。
「萩さん、お土産を買ってきますから! 」
千寿郎はどこか、旅行気分のようだ。兄の鍛錬合宿は蜜璃さんの時にはなかった気がする。だからワクワクしてつい、土産の事が口をついて出た。
「そうだね!萩さん、お土産を買ってきますね! 」
ここにも一人、合宿の怖さを知らない旅行気分の継子がいた。
三人、後部座席に並んで座り、萩さんに陽気に答えるひなたの笑顔を見ていた杏寿郎は、クスリと笑った。
「さあ!出発だ!!張り切って行こう!! 」
「はーいっ!! 」
楽しい旅行、いや、合宿の始まりだ。