第7章 ※ 鬱金香のピンクは愛の芽生え
年は四十代後半だろうか。お母さんのような人だ。…そういえば、この家は男の人ばかりで通いの萩さんの他には女性がいない。
…煉獄さん、お母さんはいないのかな…。
その話はまだ聞いた事がない。家の中に母親の影を感じさせる物が見当たらないせいもあったけれど、ひなたは今までその事を尋ねた事はない。
「あの、煉獄さんのお母さんは…? 」
おずおずと聞いてみる。萩さんと二人だから、聞いてみようと思った。
「奥様は杏寿郎さんがお小さい時に亡くなられたんです。ご病気でね、とても綺麗なしっかりした人でしたよ。私は近所だから、瑠火さんがお嫁にこられた時から知ってました。お若いのに気遣いのできる人でしたねぇ」
「そう…ですか…」
やはり亡くなっていたんだ。仏間に、いつもお花が飾られている。時に赤い花が挿してあるのを見ると、なんとなく若い女性に捧げているような気がした事があった。
「だから萩さんがこのお家に来ていらっしゃるんですね」
ひなたが言うと、萩さんはにっこり笑った。
「はい。私は槇寿郎さんの幼馴染みたいなもので、近くに住んでいたから病弱な奥様のお手伝いを頼まれたんです。丁度私も花嫁修行の時でね、私の為にもなったんです。おかげで家事を覚えましたから」
「萩さんもご結婚を? 」
「ええ。槇寿郎さんの後輩の男性とね。鬼殺隊でした。強くて素敵な人だったのよ。今は引退しましたけど。ひなたちゃんには恋人はいないの? 」
「え?…います」
不死川さんの顔が浮かんだ。背の高い、ちょっと怖い目をした、すごくかっこいい人。照れたような笑い方も、ひなたを抱きしめる時の仕草も好きだ。
「まあ!私にも見せてくれるのかしら」
優しい顔で言う萩さんに笑い返しながら、付き合い始めたばかりの不死川さんと離れている事を少し寂しく感じた。
「では、行って来ます!! 」