第7章 ※ 鬱金香のピンクは愛の芽生え
「っ…あっ熱っ!! 」
ひなたは、手の平に置いた炊き立てのご飯のあまりの熱さに耐えられず、ご飯をお櫃の中に放り投げてしまった。
「熱々のお米でないと、お握りは美味しくないんです」
リズミカルにお握りを握りながら、萩さんは笑っている。
「でも、こんなに熱いと触れないです〜! 」
ひなたはまだ、一個目のお握りも握れていない。そんなひなたの目の前で、萩さんは温かいご飯の塊を塩をとった手に置いて、焼いた鮭の身を真ん中にぐっと差し入れた。あっという間に手の中で綺麗な形のお握りができた。
「ひなたちゃんも慣れればできますよ」
「はい。やってみます」
しゃもじでご飯を掬うと、熱いのを我慢して梅を入れ握った。
「…うぅ…あつい…」
ぴょんぴょん飛びながらお握りを握るひなたを見て、萩さんはクスクスと笑い出した。
「あとは私がやりますから、ひなたちゃんはどの具が好き? 」
萩さんの優しいお母さんみたいな手は、大きく掬ったご飯をふんわりと乗せて、並んだ具を待っている。
「鮭と筋子の組み合わせが好きです! 」
「じゃあそれを多く作りましょう」
萩さんはお握りを15個も握ってくれた。お重にずらり並んだ、海苔の香りも芳しいお握り。とっても美味しそうで、お昼が楽しみだ。
お重の一段目には卵焼きや鯛の塩焼き、お漬物や甘煮にした白花豆などが綺麗に詰めてある。萩さんはお料理が上手で、ひなたはアオイさんみたいだなぁと、テキパキと調理する姿を見ていて思った。
今日からひなたは鍛錬合宿に出かけるのだ。朝ご飯の支度を終えた萩さんがひなた達のお弁当を作るのを手伝おうと思ったけれど、ひなたは、やはりお握りを一つ握った事と、お重に白花豆を詰めただけだ。
「すみません萩さん。私下手で…ありがとうございます」
沢山のおかずを作ってくれた萩さんにお礼を言うと、萩さんは紫色の鮮やかな風呂敷でお重を包む。
「お気になさらないで良いんですよ。私の仕事ですし、よく食べるお坊ちゃん達のお弁当を作るのは朝飯前です」