第7章 ※ 鬱金香のピンクは愛の芽生え
元気に言ったひなたに、杏寿郎も千寿郎も心からの笑顔になった。
「ありがとうございます!冬が楽しみだなぁ!林檎を沢山買ってきます! 」
千寿郎君が嬉しさを弾けさせると、杏寿郎もそんな姿を見てひなたに礼を伝える。
「すまんな!ひなた、冬になるのが俺も待ち遠しい。その菓子に使う材料は揃えるから、ぜひお願いしたい」
「わ、わかった! 」
こんなに喜んでくれている二人に、応えたい。ひなたはアップルパイが難度の高いお菓子だった事は、今は忘れることにして、やって来る冬を思った。
…冬が来て、次の年になれば、煉獄さんは二十歳になってしまう…。
ひなたの心には、その事実が常にのしかかっているのだ。
「どうした? ひなた」
目の前にいる19歳の煉獄さん。若さや強さで出来ているかのような、青年。その煉獄さんを無くしたくなくて、ひなたは自分の内側に入り込んでいた。
「ひなたさん? 」
千寿郎君に顔を覗き込まれ、ふうっと自分自身に戻っていく。
「…ん?なんでもないよ。今日の夜ご飯は何かな? 」
明るく誤魔化しながら言うと、千寿郎君はクスリと笑った。
「冬瓜と海老の煮物と、吸い物です。金時豆の甘煮もありました! 」
「美味しそう、ありがと」
千寿郎君は献立まで覚えてるんだな。一生懸命に教えてくれる千寿郎君が可愛くて、ひなたはニッコリした。
「ひなた、さっきの話だが」
杏寿郎の顔を見る。
「うん。何? 」
ちゃぶ台の上に置かれた、杏寿郎のしっかりとした腕が目に入る。
「来週から、鍛錬合宿に出ようと思ってるんだ」
「鍛錬合宿ぅ⁉︎ 」
「そうだ」
ひなた同様、千寿郎も驚いている。初めて聞く言葉だった。合宿とは、一体何だろう⁉︎
二人の表情を受け、杏寿郎はその唇を開いた。
「この家の庭での鍛錬に慣れたら、より広い場所を使って呼吸を使えるように訓練しようと思う。任務で家を離れる練習の意味もあるぞ。…来週までに、もっと体力をつけ、走れる身体を作っておこう! 」
生き生きと言った杏寿郎の、シゴキが始まる…そんな予感…。