第3章 必要とされないモデル
「ひなた、お疲れ様」
サングラスを上げて前髪を持ち上げると、元モデルなだけに美しい顔が露わになる。
綺麗な金髪混じりの巻き髪が、品の良い顔をゴージャスに引き立てる。
社長はまだまだモデルを続けられそうだなと、社長を見る度に思ってしまうほどの美人。
冨岡社長はひなたに語りかける。
「お誕生日おめでとう。ひなた、話があるの。今、いい? 」
「はい!何ですか」
と言いながら、ひなたは社長の背後にいる秘書の男性を見た。いつも秘書の人が花束を抱えているから。
自分の後ろに気を取られているひなたが気になるのか、社長は少しだけ言葉がキツくなる。
「ひなた」
「あっ、はい! 」
ひなたは、まるで秒単位で動いているかのような社長の、貴重な時間を無駄にした気がして、社長に顔を向けた。
「ひなた。突然だけど、契約は今月で終わりになるわ」
「………え…? 」
聞き返してしまった。
およそひなたが期待した言葉とは違う言葉で、理解に時間がかかる。
「ごめんね。18歳の間は言わないでおこうって決めていたの。今日から19でしょう、受け止めて欲しいの」
「………どうして、ですか…」
それだけ言うのが精一杯だった。
ハッピーバースデーで浮かれていた気持ちはもう、どこかへ消えてしまった。不安がひなたの顔に広がっていく。
社長は、そんなひなたの顔を見ながら、はっきりと続ける。
「13歳の時から初めて、今日までやってきて、環境が変わってきてるのは分かるわね? 」
「………」
「あなたは、中学生のモデルとして大ブレイクした。初めてのメイク特集は反響が凄かったし、あなたが使ったコスメも売れた。美しいあなたは憧れの存在として、高校生までの女の子達から絶大な支持を受けるモデルだったわ。でもね、大人になったひなたの良さって何?
ひなたがこれからもモデルを続けるには、今のあなたでは売りがないの」
社長は、まわりくどい話はしない。分かってる…そんな社長が好きだった。