第3章 必要とされないモデル
いつものように、スムージーのカップを取りストローに口をつける。
撮影現場は強いライトと心地良い緊張感で喉が乾いていた。
「おいしい」
マンゴーの香りが広がって、喉を通る時に少し感じるヘルシーな青い味が、健康的で栄養を与えてくれる気がして大好きだ。
「ふー」
小さく息をして、ふと視線を感じた。スタジオの入り口の方を見ると、モデル事務所の社長がこちらを見ていた。
「あっ、社長だ! 」
スムージーを置いて、社長の元へと駆け寄る。
ひなたの顔には笑みが広がっている。今日はひなたの誕生日なのだ。
ひなたの所属するリアルミューズ事務所は大手ではないけれど、その業界では信用がある事務所だ。
敏腕な女社長の元でひなたをはじめとする十数人が雑誌やショーやテレビに至るまで活動している。
社長は事務所で売れっ子のひなたの誕生日にはいつも、お祝いをしてくれる。
今日も誰よりも先に19歳のお祝いを言うために会いに来たようだ。
花束と、何かプレゼントを持ってきて、夜には食事をしようと誘うために。
ひなたがモデルを始めた13歳の時から、社長…冨岡社長はひなたに目をかけてくれていた。
去年の18歳のバースデーには南青山のレストランでお祝いをした。
大人の仲間入りをしたひなたに、豪華なパーティーや大人の嗜みをプレゼントしてくれる。
ひなたは社長を慕っているし、モデルの仕事が天職だと思う。
「社長、おはようございます」
エルメスのサングラスをした冨岡社長は、駆け寄って来たひなたを見て口元に微笑を浮かべた。