第7章 ※ 鬱金香のピンクは愛の芽生え
「俺も練習します。ひなたさん、一緒にやりましょう」
「うん! 」
それから二人で小一時間程、練習をした。聞けば千寿郎君は三歳から剣道を始めたそうだ。
「千寿郎君は上手いね!構えとか、しっかりしてブレてないもの。三歳からやってるんだ、すごーい! 」
庭に面した縁側に二人で座ってお話ししている。
「俺はまだまだなんです。俺の先生は父と兄上ですが、二人はもっと凄いから…」
千寿郎君は照れたように言った。
「煉獄さんと千寿郎君は、お父さんが先生なんだね。お父さんは、今は剣道とかしないの? 」
ひなたが煉獄家に来て四日経ったが、その間、槇寿郎お父さんが家の中を歩き回ったり、鍛錬したりする姿を見なかった。自分の家なのに、部屋からあまり出ないのか、槇寿郎とはほとんど顔を合わせていない。
それがひなたには不思議だった。
「はい。父は俺が小さな時は、熱心に教えてくれていました。兄上と俺は、煉獄家の後継者なので、父は自分の鍛錬をしながらも兄上と俺を育てようとしていました」
「今は、違うの? 」
「今は…。母が亡くなった後、父はふさぎ込むようになりました。ひなたさんはすぐに分かると思いますが、酒を手離せず、部屋からもあまり出てきません。俺が小さかった時の父は、優しくて笑顔が凄く良い人でした」
「あまり覚えてないんです…俺、小さかったから」
千寿郎君は寂しそうに笑った。ひなたは、聞いてはいけなかったかなと思った。でも、話してくれたしひなたはこの家の事情が分かって良かったと思う事にした。
何か、千寿郎君を励ます言葉を探していると、千寿郎君はひなたに向かって優しい笑顔になって言う。
「色々話しましたが、お気になさらないで下さい。兄上もいますし、俺もひなたさんのお手伝いをしますね!…そろそろ兄上は帰って来るかなぁ」