第7章 ※ 鬱金香のピンクは愛の芽生え
煉獄さんが教えてくれた時は何とか形になっていたのに、一人でやると何かが違う。思い出してやろうとしているのに難しい。
「頑張らないといけないのになぁ」
暫く竹刀を振っていたけど、やめて座り込んだ。竹刀の先で足元の土をカリカリと引っ掻く。
「煉獄さん、どこに行ったのかな」
朝食を食べた後、煉獄さんは急いで何処かへ出掛けて行った。行き先は聞いていない。
「さっ、煉獄さんが帰って来るまで、もう少し練習しとこう」
ひなたはお尻を払って立ち上がった。もう一度、構えから始める。竹刀を握る腕は色白で華奢で、武道など今までやった事がない。自分でも、へっぴり腰になっているのが分かる。
「えいっ! 」
竹刀を振り前に踏み出した。
「…ん? 」
なんとなく、背後に視線を感じた気がして振り向いた。
「…気のせいか…。今、誰かいたような気がしたんだけど…」
振り向いても誰もいなかったけど一瞬、金髪のような煌めきの影が見えたような気がして、ひなたはキョロキョロ見回してみた。広い庭にはひなたの他には人はいない。燦々と降る陽気と夏空が広がる。
また気を取り直して、練習の続きをしようと構えたら、千寿郎君がやって来た。草履の音をさせながら走って来る。
「ひなたさん。ここにいたんですね!お部屋にいないから探しました! 」
ひなたは竹刀を下ろして千寿郎君に微笑む。
「練習しようと思って。今日初めて竹刀を握ったの。難しいね! 」
「そうですね。兄は毎日少しでも練習するようにと言います。昨日の自分より上達するからって」
千寿郎君はひなたを見上げて言った。可愛いらしい顔をしている。大きな紅い瞳が澄んでいて、誠実な心を持った少年だと伝わってくる。
そんな所も、お兄さんに似ているんだな。
ひとりっ子のひなたは、煉獄兄弟を見ていると微笑ましくなってくるのだ。
千寿郎君がお兄さんを慕っているのが良く分かるから。