第7章 ※ 鬱金香のピンクは愛の芽生え
「えっと、こうやって持つんだったかな。親指と人差し指の間で…」
竹刀の握り方を思い出してやってみる。今朝も5時に起きて床を磨いてから、師範と二人の鍛錬がスタートした。
「左手で握って右手を添えて…」
煉獄さんは忙しい身である。任務と任務の間を縫うようにしてひなたに稽古をつけてくれた。
この日も、明け方に帰って来てからすぐに、隊服から道着に着替えた煉獄さんは、床拭きを終わらせたひなたのタイミングを見て庭へと連れ出した。
「では、早速始めよう!声を出すことは大切な事だ。剣の道では特にだ。ひなたも心がけていこう」
「はい」
広い庭の真ん中で向かい合った二人を、早朝の日差しが優しく照らし出す。
「ひなたは初めてだから、竹刀の握り方から覚えよう。手の内一つで、動きが鋭くも鈍くもなるんだ。基本中の基本だ。身体に染み込むまでやろう」
「はい! 」
初心者のひなたにも分かり易いように、ひなたの横に来て手を添えてくれる。
「左手で持って。…こう。そうだ」
ひなたの左手がしっかり握れているか、指の位置を正しく導きながら、右手を竹刀の柄に添えさせて基本のフォームを作る。
「この形になるよう、覚えて」
「うん」
ひなたは初めて持つ竹刀を、つい右手で力強く持とうとしてしまう。その度に杏寿郎が教えてくれる。
「左手に力を込めるのは、身体の均衡を保つ為なんだ。もう一度」
夏の太陽が昇って行くのも忘れる位、ひなたは一生懸命にやった。竹刀が持てるようになると、足運びと素振りだ。
「ひなた。左足、足先が外に向いてるぞ!真っ直ぐに」
「はいっ! 」
千寿郎君が朝ご飯の支度が出来た事を知らせてくれるまで、杏寿郎はひなたに熱心な稽古をつけてくれた。