第7章 ※ 鬱金香のピンクは愛の芽生え
縁側から、こちらに歩み寄って来た槇寿郎は、ひなたの前に来ると重い口を開いた。
「…君は…。あまね様に生き写しだ…」
槇寿郎は驚いていた。今から十年程前になるだろうか。自分が付き添いをしたお館様とあまね様のお見合いの日の事が鮮やかに脳裏に浮かんだ。
目の前にいるひなたが、あの日の神籬あまね様に瓜二つだったからだ。
可愛らしい着物を着て、結い上げた艶のある白系の髪や美しい顔立ちの一つ一つが、あまねによく似ている。
あまね本人が目の前にいるようで、槇寿郎は思わず、あまねに語りかけるように話した。
「お館様より、ご書簡を頂いております。かような屋敷ではありますが…。宜しければごゆるりと…なさって下さい…」
静かな低い声で槇寿郎は話した。
「あっ、ありがとうございます! 」
ペコリと頭を下げてひなたはお礼を言った。隣にいる杏寿郎が内心、ホッとしている事に気付く事なく、近くで見る槇寿郎の放つ圧倒的な存在感の前で、緊張してしまいながら。
ひなたを連れてくる数日前、耀哉は槇寿郎に手紙を書き送っていた。親類の女の子が杏寿郎の元で継子になる修行をしたいので、煉獄家で世話をお願いできないかと。少し心が傷付く出来事があったので、煉獄家で暮らしながら気力の回復を期待している事。槇寿郎にも見守っていて欲しいという内容の手紙を、槇寿郎は受け取っていた。
「杏寿郎の継子は甘露寺君以来か…。身体に気をつけて頑張りなさい」
槇寿郎にしては、良く話した方だろう。杏寿郎は内心、父が怒り出すかもしれないという思いもあったので、槇寿郎がひなたを受け入れて、少しでも話をした事が嬉しかった。
父は優しい人だと思うが、時に声を荒げる事があるので心配だった。
明るい甘露寺がいた前例があるので、受け入れ易かったか、それとも…。
ひなたを見る父の瞳が、僅かに嬉しそうだった気がして、杏寿郎はふと、不思議な気持ちに囚われる。
「では、失礼致します。行こう、ひなた」
ひなたを連れ父の部屋を後にして、とりあえず、紹介が事なき終えた事に安堵した。