第6章 ※ 再びあなたに逢えたなら
刀を戻して男性はひなたに駆け寄った。逃げる鬼は追いたかったが、被害者の消えそうな声に宇髄の鼓動がドキリとした。
今はこの被害者の命が優先される。
「おい、しっかりしろ!…怪我してるな、おい、しっかり! 」
意識を失いかけているひなたを抱き上げ、宇髄はその頬に触れた。
「この人は…あまね様の…! 」
腕の中の、ぐったりとした女の子には見覚えがある。お館様の屋敷で何度か会った事があったからだ。
産屋敷あまねによく似た女の子。聞けば誰かが、あまね様の親戚だと言っていた。
「なんで…こんな所にこの子がいるんだよ…?こんな時間に何してる⁈ 」
宇髄は一人呟いて、ひなたを抱いて立ち上がる。
「くそ…。血が止まらねぇ。蝶屋敷より、産屋敷邸が近いよな」
ひなたをしっかりと抱きしめると、颯のように駆け出した。まるで、ふっと姿を消すような速さで消えた宇髄とひなた。
後に残されたのは、荒れた草むらと、ひなたの血痕である。
程なくして、事件現場に杏寿郎が現れた。今夜はこの近くで別の任務があり、帰りに偶然通りかかった杏寿郎は、不穏な空気を感じて来てみると、火薬の跡がある。
「…む?これは、音柱の使う火薬に似ている。なんだ、これは…」
草についたまだ新しい血に気が付いた杏寿郎は、大体の事を悟った。
「鬼の気配はもう無いが…宇髄が助けたのだろうな」
誰もいない場所に立ち、被害者が無事である事を祈らずにはいられなかった。
「俺はもう少し、この辺りを見て廻るとするか」
まさかひなたがその被害者だと、知らされるのは暫く経ってからだった。