第6章 ※ 再びあなたに逢えたなら
「良い女は遊び甲斐があるぜ…」
それ、はひなたにピタリと焦点を当てたまま、じりじりと近づいて来た。
「い、いや…! 」
体の向きを変え、怪物から離れて走り出そうと、やっと身体を動かすことをできるまでにひなたは正気を取り戻した。
…逃げないと…殺される…!!
その思いが体を、足を前に進めようとした。その時ーーーーー
「何処行くんだよ、綺麗なねぇちゃん…遊ぼうぜぇ」
「きゃっ!! 」
それ、がひなたの腕を掴んだ。二人の間の距離は瞬きする間に詰められ、男の目がひなたの目の前にあった。
「俺は今、腹も減ってるが、人間をいたぶりたいぜ…はぁ…」
ひなたの首の辺りに男の鼻先が寄せられる。ひなたの匂いを確かめるように嗅ぐと、唇だけで笑った。
「女の、匂いがするぜ…その荷物は変な食いもんの臭いがするがな…」
そう言うなり、スーツケースを蹴飛ばした。スーツケースは空を舞いながら数メートル先まで飛ばされる。ひなたは目を見開いた。
…なんて、恐ろしい力なの…!
「はぁ…良い匂いだなァ、気に入ったぜ、喰ってやるからなァ…」
「嫌あああっ!! 」
ひなたはその男を両手でつき飛ばそうとした。しかし、男はびくともしない。ひなたの怖がる様子が楽しくて笑いがこぼれた。
「嫌がる顔が好きなんだぁ、女の、そんな顔がたまんねぇよ…」
「……っいや…! 」
男は素早い動きでひなたを脇に抱えると、商店から離れた近くの草むらまで飛んだ。およそ人間とは思えぬ脚力…これが、鬼という者なのかと思うが、声も出ない程、一瞬の出来事だった。