第6章 ※ 再びあなたに逢えたなら
遠く、通りのずっと向こう、街頭の灯りでようやく見える所を何かが動いているのが見えた。どうやら人のようだ。
「あっ、歩いてる人いた!良かったぁ! 」
人影の方へと歩き出す。パンパンに中身の詰まったスーツケースが重いけど、あの人を見失うと本当に困った事になる。
ひなたは嬉しさで頑張って早足に歩いた。
「あのっ、すみません!ここはどこで……」
言いかけた言葉を飲み込んだ。スキンヘッドみたいな頭には毛がなく、近づいて分かったが皮膚感が人間離れしていた。
青くて、黒い入れ墨のような模様が、顔や体に刻まれている。映画で見るモンスターのようなその姿に、一瞬で背筋が凍りついた。
「…………」
言葉を失って立ちつくす。その者との距離は6メートルはあると思うが、少し離れていても異様な圧を感じた。邪悪な者が、夜を闊歩している…。
そう思った時には、それはひなたを見ていた。
「よぉ!こんな人気のねぇ商店前で、買い物かぁ? 」
恐ろしい声だった。耳から流れ込む得体の知れない恐怖が身体の自由を奪った。
「俺はなぁ、客を探してんだ。人力車に乗せる客だァ…。俺が一番、速いからよぉ。気に入ったら乗せんだよ。気に入らなかったら、どうすると思う? 」
口元は笑いを浮かべているが、目には苛立ちを浮かべひなたに焦点を当てている。
「おい、ねぇちゃん。俺はなぁ、匂いで決めんだよ…。女特有の匂いは良し。食いもんの匂いはいけねェ。鬼になってこのかた、食いもんの匂いはどうも受け付けねぇ」
「……っ、や…」
ようやく出た言葉は余りにも小さく、恐怖で喉が締め付けられ、言葉にならない。