第6章 ※ 再びあなたに逢えたなら
どこか近くで虫の鳴き声がする。夏の夜に外に出ると、おじいちゃんの庭から聞こえてくる、色々な虫の声みたいだ。
そういえば草むらの匂いもする。青い緑や土の間を通った風が運んでくる夏のにおい。
「…んんん…ここは…」
重たい身体を支えながら起き上がる。街灯に照らされた通りを、目を凝らして見回してみた。
辺りは真っ暗に近かった。等間隔に置かれた街灯の灯りが、誰もいない通りを照らしている。人気のない、どこかの町。商店などが軒を連ねている。どの店も店じまいをしているのか、明かりもなく戸口は閉められていた。
「あ、あら…? 産屋敷家じゃないな…」
そういう事もあるのだろうか。流星群が運んでくれた先は、産屋敷邸とは限らないのかな…。
「誰か…誰もいないな…。どうしよう…」
辺りを見回して、途方に暮れてしまった。お昼なら人も沢山いたはずなのに、夜になると人の気配もない。
シン…と静まる道の真ん中で、スーツケースとひなたは、ポツンと立ち尽くした。
「困ったなぁ…誰かに聞きたいけど誰もいないなぁ」
スーツケースをゴロゴロ引いて、商店の前を歩き出した。せめて旅館の一つでもあったなら、今夜はそこに泊まる事ができるのに。
「こっちに来て早々に野宿はやだな…」
一人で呟く言葉の他には目立つ音もしない。とにかく寂しい状況に、心細くなってしまって、長い通りをとぼとぼ歩いた。