第6章 ※ 再びあなたに逢えたなら
「いや…いやよ…こんなの…!絶対にいや!! 」
声に出して言った。じゃないと、気が変になりそうだった。自分をしっかりと保つ為、倒れないようにするため、声を出すことで自分を保とうとする。
机にぶつかるようにして離れ、そのまま部屋を飛び出した。
廊下を走って玄関から外に出る。泣きながら歩き、裏庭の方まで来ていた。
「…何にもできないの? 過ぎてしまった事で済ませられるの…? 」
鬼殺隊が活躍した時代はもう過去だ。全てを過去の出来事で片付けてしまえば、激動の歴史で終わる。
彼らを知らなかったなら、それでも良かったかもしれない。
でも、ひなたは彼らに会って、身近に接して来たのだ。終わった事なんて、到底言う事などできなかった。
「煉獄さんは、あの若さで死んでいい人じゃないでしょう?…」
心の中に住んでいる、笑顔の綺麗な、煉獄さんに語りかける。
「もう会えなくても、煉獄さんが笑って人生を全うしてたら、こんな気持ちにはならないのに」
涙がどんどん溢れてきて、どうしたら良いのかわからなかった。
たった一人で、裏庭に立ち尽くしていた。産屋敷家の敷地は広いので、裏庭もしっかり広い。輝利哉によって剪定されている盆栽が至る所に置いてある他、調和のとれた庭木と岩とがしっくりと馴染んでいる。
美しい庭だけど、一人でいると心細くなってくるような裏庭だ。
でも、家に入る気もしない。一人になりたかった。
竹製のベンチに座って、ただぼんやりとしていた。
どのくらいの時間が経ったか、すっかり暗くなった頃、ひなたの足元に柔らかな物がスリスリと、摺り寄せる感じがしてハッとなった。
「ん⁉︎ 」
なんだかとても気持ちの良い感触に顔を上げる。
「ニャアア」
優しく小さな鳴き声だった。足元に猫ちゃんがいる!
「君可愛いね!どこから来たのかにゃ? 」
ひなたは猫を見ると言葉使いが変わるタイプのようだ。
「可愛い三毛猫ちゃん!ふわふわしてるんだね! 」
スリスリしてくる猫ちゃんにすっかりメロメロになって撫でた。