第6章 ※ 再びあなたに逢えたなら
「おじいちゃん、お茶どうぞ」
「ありがとう。良い色だね」
「カナエ先生がね、おじいちゃんに飲ませたいって持って来てくれたの」
食後に緑茶を淹れて、二人で飲んでいる。瑞々しい緑色のお茶は、口当たりが良く甘くてまろやかだ。
「美味しいね、おじいちゃん! 」
「本当に美味しいね。カナエ先生にお礼をしないといけないな。カナエ先生は甘い物が好きなんだよ」
輝利哉は先生達の好みを知っているようだ。
「そうね。クッキーとかケーキを良く食べてるね。何かお礼にお菓子を買ってくるわ」
ひなたは明後日、モデルのお仕事が入っていた。お仕事の帰り道で、何か買ってこよう。
「ああ、ひなた」
明後日のお仕事で行く場所の事を考えていたら、輝利哉に名前を呼ばれた。
「ん?なあに」
輝利哉はゆっくりと立ち上がると、書斎の鍵のかかっている引き出しを開けて、一冊の本を持ってきた。
丁寧な手仕事で製本されたと思われる、藤の花の印のついた本。カバーは墨色で分厚く、およそ本屋さんでは見かけた事のない美しい本だった。
「私は倒れる前に、ひなたに話したね。白梅の盆栽をひなたに託したいと考えている事を」
輝利哉は窓辺に置かれた白梅の盆栽に目をやる。あの夜、慌てたひなたが、幹の流星群の中に隠した、あの白梅だ。
不思議なことに、ちゃんと輝利哉の元に戻っていた。
「目覚めて、一番にしなければならないと思ったのは、ひなたに、この本の事を話して、読む事ができるようにしておきたくてね」
「それって、もしかして」
前に聞いた事のある、産屋敷くいなの書いたという、日記の事だろうか。
「そうだよ。産屋敷くいなの記した、備忘録だよ」
パサり。ひなたの前に静かに置かれたその本は、まるで本自体が息をしているように見えるほど、存在感があり、堂々としていた。