第5章 流星群が誘う旅
ガラス細工を売る女性は嬉しそうに言った。
「そうか!とても綺麗で、男の俺でも見惚れてしまった」
屈託なく話す杏寿郎の笑顔が気に入った店主は、緑色の葉に桃の実のついたブローチを出して杏寿郎の手のひらにのせる。
「お兄さん、これはまだ試作なんだけど、沢山買ってくれたお礼にあげるわ。その制服の胸元に付けても良いでしょ?袴の腰紐に付けても素敵よ」
手の平の上で透明な緑色の葉が煌めく。杏寿郎は目を開いた。
「いいのか?こんなに良い物をいただいても」
「ええ。お兄さん素敵だから差し上げるわ。これからも人を助けてね! 」
女性は嬉しそうに言った。
「君も鬼殺隊に助けられた一人なのか? 」
杏寿郎が尋ねると、女性は頷く。
「私の母がね。鬼に襲われた時に助けてもらったのよ。今日、ここに来ている露店の店主の中には沢山いるわ。産屋敷耀哉さんは、鬼に襲われた人達を支援してくれてね。私もお店を立ち上げるのを手伝ってもらったの。鬼殺隊祭にも、こうして呼んでもらえてありがたいの」
耀哉が、鬼に襲われた人の、その後の生活のお世話までしていたとは…。
「お館様の深いご配慮があった事を初めて知った。良い話を聞かせてもらって礼を言う。このガラス細工を見るたびに、君の事やお館様の事を思う。どうもありがとう!また会おう! 」
優しさのこもった杏寿郎の言葉に、女性も激励をもらった気がした。
店を離れ歩き出した杏寿郎の羽織が揺れて、赤と黄色の炎の模様がゆらめいた。
「あっ、そうだわ!次はあれを作ってみよう! 」
女性はスケッチブックを取り出すと、鉛筆で杏寿郎の羽織の模様を走り書きした。
「忘れないように…赤と黄色と」
新しいモチーフを得る時は、恋をする時が多いのだ。
また、あの人に会いたいなと思った。